「低出生体重児」とは?在胎週数と出生体重の目安とは?

低出生体重児とは?

低出生体重児は出生体重が2500g未満の児を言い、特に出生体重が1500g未満の児を極低出生体重児、1000g未満の児を超低出生体重児と呼びます。
低出生体重児と極低出生体重児、超低出生体重児を区別している理由として、1500gや1000gを境として呼吸や循環、代謝などの全身管理法が大きく異なり、死亡率も異なるためです。
特に超低出生体重児は予後不良の可能性が高く、未熟性に伴う特異な病態生理を呈するため区別されています。

低出生体重児の呼び方
呼び方体重
低出生体重児1500g以上~2500g未満
極低出生体重児1000g以上~1500g未満
超低出生体重児1000g未満

在胎週数と出生体重の関係

通常は出生体重は在胎週数にぼぼ比例していますが、必ずしもそうではなく、胎児発育不全などで在胎週数相応の体重に満たない場合もあり、在胎週数に対する出生体重によって以下のように3つのグループに分けられます。
特に早産の場合、在胎週数相応の発育が見られるかどうか(胎児発育不全がないか)で出生後のリスクが異なってきます。

出生体重のグループごとの児の呼び方
呼び方出生体重
HFD(Heavy for dates)児在胎週数に対して出生体重が重い(90パーセンタイル以上)
AFD(Appropriate for dates)児在胎週数に対して出生体重が標準の範囲(10~90パーセンタイルの間)
LFD(Light for dates)児在胎週数に対して出生体重が軽い(10パーセンタイル未満)

早産と未熟児の関係

在胎22週0日から37週未満(36週6日まで)で出生した児を早産児(これよりも前の出産は流産)と呼びますが、特に在胎28週未満で出生した児を超未熟児あるいは超早産児と呼びます。
母子健康法上の未熟児は身体の発育が未熟のまま出生した乳児であって、正常児が出生時に有する諸機能を得るに至るまでのものと定義されています。

原因は?

低出生体重児の原因は大きく分けて早産胎児発育不全の2つがあります。

早産児の場合

在胎週数相応の体重ではあるが早く出生したために低出生体重児となる場合として、以下のリスク因子が挙げられます。

発育不全の場合

胎児の発育不全のリスク因子としては、以下の疾患が挙げられます。

特に、母体が妊娠高血圧症候群の場合では、胎児発育不全(FGR)による低出生体重児のリスクが非常に高くなります。
主な原因となるのは低酸素低血流です。

初期症状は?

各原因疾患のページをご参照ください。

出産や胎児へのリスクは?

早産児の場合

在胎週数が少ない児(在胎週数相応の体重はある)の場合、最も問題なのは呼吸機能と循環機能です。
肺胞内のサーファクタント(肺胞が潰れるのを防ぐ肺胞内の界面活性剤物質)は、在胎34週でほぼ満期と同じ産生量となり、早産児では肺サーファクタントが不足するため、呼吸障害(呼吸窮迫症候群など)が在胎週数が少ないほど起こる可能性が高くなります。

発育不全の場合

妊娠高血圧症候群児のように、在胎週数相応の体重増加がない児(胎児発育不全)の場合、長期間、低酸素、低血流の状態にさらされた事により、一般的な低出生体重児とは異なり、出生後に心不全や腎不全などの水や電解質のバランスを保つ機能に障害が起きます。

予防方法は?

各原因疾患のページをご参照ください。

検査方法は?

以下の検査を用いて、子宮内の環境の検査を実施することで、胎児の状態を評価することができます。

超音波ドップラー法

胎児血流波形や速度を評価する方法で、胎児の心機能評価や先天性心疾患の診断が行えます。
また、血行動態から胎児発育不全(FGR)や多胎児などの胎児機能評価などを行うことも可能です。

羊水の量と質の検査

超音波トランスデューサーを用いて子宮を測定(測定箇所を十字に4分割して測定)する事により羊水量を定量化して、羊水過多や羊水過少などを診断します。
羊水量に問題がある場合、胎児の中枢神経障害や腎臓からの尿産生異常や嚥下障害、消化管閉塞などが疑われます。
特に前期破水などによる羊水過少は胎児機能の成熟を阻害するだけではなく、悪化を招く可能性があります。

ノンストレステスト(NST)

陣痛(子宮収縮)のない状態で、胎児心拍数をモニタリングし、正常な心拍数(well-being)かどうかを確認します。

母体の疾患

もし、母体側に基礎疾患や妊娠合併症(妊娠高血圧症候群など)がある場合、その疾患に伴う胎児への影響を調べます。

治療方法は?

低出生体重児の分娩時には、新生児科医が立ち会い、出生後に新生児の蘇生法アルゴリズム(NCPR:Neonatal Cardio Pulmonary Resuscitation)に従い蘇生措置を行います。

新生児の蘇生法アルゴリズムによる措置の流れ

新生児の蘇生法アルゴリズムによる蘇生措置の実施基準は早産児弱い呼吸や啼泣筋緊張低下の3つの内のいずれかが認められた場合です。
このため、早産児の場合、必ず新生児の蘇生法アルゴリズムに従った蘇生措置が実施されます。

  1. まず、蘇生の初期措置(保温、体位保持、気道開通(胎便除去)、皮膚乾燥と刺激)を行います。
  2. もし、それでも自発呼吸がなかったり、心拍数が100/分未満の場合、人工呼吸(バッグマスク換気)を行います。
    ※バッグマスク換気は楕円形のバッグを手で押して空気を送り込む事ができるマスクです。空気は一方通行(押し出すのみ)で空気を押し出した後、自動で膨らみ、元の大きさに戻ります。
    ※新生児仮死の場合、バッグマスク換気のみで約90%が改善します。
  3. ここまでを出生後から60秒以内に行い、心拍数が100/分以上にならない場合は人工呼吸を継続します。
  4. もし心拍数が60/分未満の場合、人工呼吸に加えて胸骨圧迫(1分間に人工呼吸30回、胸骨圧迫90回)も行います。
  5. 心拍数が100/分以上になり、自発呼吸が確認できれば、努力呼吸中心性チアノーゼの有無の確認を行います。
    ※努力呼吸は通常の呼吸ではなく、呼吸筋だけではなく、胸鎖乳突筋・内肋間筋・腹筋などの補助呼吸筋も使用した呼吸で、苦しそうな呼吸の状態です。
  6. もし通常の呼吸になり、中心性チアノーゼも改善すれば蘇生措置は終了です。
    ※但し、努力呼吸のみが続く場合、原因特定とCPAP治療(鼻に装着したマスクから空気を送り込む)を検討します。
    ※また、中心性チアノーゼのみが続く場合、チアノーゼ性心疾患かどうかを鑑別します。

公開日時:2017-07-28 23:55:41

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