「子宮奇形」とは?原因は胎生期のミュラー管の発育不全に遡る?
子宮奇形とは?
子宮奇形は胎生期のミュラー管(中腎傍管)の分化や発育、癒合不全による子宮の奇形で、中隔子宮、双角子宮、重複子宮、弓状子宮、単角・副角子宮などがあります。
中隔子宮
子宮の形は正常ですが、子宮内腔に壁があり、子宮内腔が2つに分かれている状態です。
双角子宮
1つの子宮の中に2つの内腔が存在しており、子宮口も2つある状態です。
中隔子宮と異なる点は、子宮内腔と子宮口が完全に2つに分かれている点です。
重複子宮
子宮が2つあり、子宮口も腟も2つ存在する状態です。
双角子宮は1つの子宮内の内腔と子宮口が2つに分かれているのに対して、重複子宮は子宮自体が2つに分かれている点が大きな違いです。
弓状子宮
子宮上部の子宮底部がくぼんでいる状態です。
子宮内腔はハートの形をしていますが、ハートの上のくぼんだ部分のくぼみ方が大きい状態です。
単角・副角子宮
左右のミュラー管の片側が欠損している状態を単角子宮、副角の痕跡だけが残っている状態を副各子宮と呼びます。
子宮の大きさが通常の半分程度の大きさしかない場合もあります。
原因は?
胎生期におけるミュラー管の発育不全によるものですが、その原因は不明です。
初期症状は?
無症状で不妊治療や超音波検査などの際に偶然見つかることが多いです。
出産や胎児へのリスクは?
流産や早産、胎児発育不全、胎位異常、遷延分娩、弛緩出血などを発症する可能性があります。
発生する確率は?
一般女性の発生確率は3.8~6.7%です。
なお、不妊症の女性では2.4~7.3%、不育症の女性では6.3~ 16.7%を占めます。
不妊症との関連はあまりなく、子宮奇形を有する女性でも約80%は妊娠が成立し、約50%が妊娠を継続することができる事が分かっています。
但し、正期産の割合は子宮奇形例で約50%、正常子宮例で約80%であり、子宮奇形の場合、流産や早産の確率は正常な子宮よりも高くなります。
検査方法は?
超音波検査や診察でも確認されることがありますが、多くは妊娠前の不妊治療や帝王切開術で診断されます。
治療方法は?
妊娠中においては、流産や早産に注意しながら、予防として子宮頸管縫縮術を施行します。
分娩時においては、胎位異常、微弱陣痛、遷延分娩のために、吸引分娩や帝王切開術がとられる事もあります。
流産や早産を繰り返す中隔子宮や双角子宮の場合
中隔子宮や弓状子宮で、流産や早産を繰り返す場合(反復流産症)や、子宮奇形以外の明らかな不妊症の原因がない場合(原因不明不妊症)に次の手術を行う事があります。
中隔子宮の場合
子宮鏡下に中隔切除を行い、流産のリスクを低減させます。
弓状子宮・双角子宮の場合
開腹子宮形成術を用いて、子宮底部に横切開を加えて中隔を切除し,子宮底を矢状方向に縫合します。(Strassmann手術)
他に、子宮底部に縦切開を加えて中隔を切除し,両側子宮を縫合する場合(Jones & Jones手術)、子宮底部に縦切開を加えて子宮内腔に達したところで内腔を左右に向かい中隔を切除す
る場合(Tompkins手術)があります。
公開日時:2016年07月29日 21時46分
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