約13%の妊婦で発症する「産後うつ病」とは?日光浴で防止可能?
産後うつ病とは?
産後うつ病は分娩後に新たに気分の落ち込みや興味の減退などの症状が現れた状態を言います。
分娩後に新たに発症したうつ病を指すため、分娩前からうつ病の症状があった場合や、分娩からかなりの期間が経ってから発症したうつ病は、産後うつには該当しません。
分娩後からいつまでを産後うつ病の範囲とするかは意見が分かれていますが、分娩後4週間~1年とする場合が多く、分娩後1年間の間に発症したうつ病は産後うつ病に含まれます。
原因は?
産後うつ病の因子
産後うつ病の因子としては以下が考えられます。
なお、以下の内の1つの原因ではなく複合的な要因により発症するとされています。
- 妊娠うつ病
- 自尊感情の低下
- 育児ストレス
- 妊娠中からの不安
- ライフストレス
- 社会的支援の欠如
- うつ病既往
- 夫婦関係
- 新生児の気質
- マタニティブルーズ
- 未婚
- 貧困
- 望まない妊娠・出産
内分泌学的要因
うつ病はエストロゲンやセロトニンの減少が一因とも言われています。
セレトニンとは
セレトニンはアミン系の化合物であり、神経伝達物質の1つです。
主に不安や恐怖を抑え、精神を安定化させる作用があり、このセロトニンの減少や欠乏がうつ病発症の一因と考えられています。
「光照射療法」で知られているように、セロトニンは日光を浴びることで交感神経が刺激され、増加することが分かっており、気分転換も兼ねて毎日一定時間日光を浴びることはうつ病の抑止に繋がります。
育児を夫にまかせて、毎日一定時間散歩を行うのも良いかもしれません。
初期症状は?
症状はうつ病と同様であり、以下のような症状が現れます。
- 抑うつ
- 興味の減退または消失
- 睡眠障害
- 食欲低下
- 体重減少
- 易疲労性
- 集中力の低下
- 焦燥感
- 希死念慮
- 自殺企図
褥婦や子どもへのリスクは?
褥婦は睡眠障害や食欲低下などにより、疲労が蓄積し、心身ともに日常生活に支障をきたすようになります。
またそれにより育児も思うようにできず、自信喪失、自尊感情低下になり、更にうつ病の症状を悪化させるという悪循環に陥る可能性があります。
また夫にも妻のうつ病により様々な負担が生じ、妻の治療のために夫の育児や家事を分担する割合も増加し、仕事にも支障が生じる可能性があります。
そのため、夫が育児休暇を取得し、家事・育児に専念する必要がある場合もあるでしょう。
※法律上、出産から1年間は育児休暇を取得できますが、まだまだ会社によっては取得しにくいところも多いようです。
もっとも懸念されるのは、うつ病になると、興味の減退だけではなく子どもに対する注意や愛情も減退することです。
これは予期しない子どもの事故や、育児放棄、虐待に繋がりかねません。
夫はその徴候を敏感に察知し、必要と感じれは育児休暇を取得し、妻を助ける必要があるでしょう。
発生する確率は?
日本では産後うつ病の発症率は約12.8%と報告されています。
欧米でも13%であり、大差はありません。
予防方法は?
様々な要因が複合しているため、一概に予防方法は言えませんが、うつ病の大きな要因である、ストレス、疲労、睡眠不足を解消することを心がける事が大切です。
そのためには、十分な休息・睡眠をとることが必須であり、それには夫の協力(家事・育児)も必要になりますし、ストレス解消のためには同じ状態に置かれている育児仲間との交流(ピアサポート)も有効です。
また、神経伝達物質であるセロトニンを増やすために毎日一定時間、日光にあたる事も有効です。
検査方法は?
スクリーニング検査としてエディンバラ産後うつ病事故調査票(EPDS)が用いられます。
これは、自己記入式質問紙で4段階評価で最低点が0点、最高点が30点であり、9点以上で産後うつ病の可能性があります。
EPDSの質問例として「笑うことができたし、物事のおかしい面もわかったか」や「物事を楽しみにして待ったか」、「物事が悪くいった時、自分を不必要に責めたか」、「はっきりした理由もないのに不安になったり、心配したか」、「はっきりした理由もないのに恐怖に襲われたか」などが問われます。
但し、EPDSはあくまでもスクリーニングのためのものであり、確定診断のためには精神科医や臨床心理士の診察を受ける必要があります。
治療方法は?
治療方法は大きく分けて、心理療法と薬物療法があります。
心理療法
心理教育や心理療法により産後うつ病の治療を行います。
具体的にはカウンセリングを行い、情報提供を受け、それに対して対処方法や問題の解決方法を提示します。
心理療法には母親学級などでの妊婦集団教育、ピアカウンセリング(妊婦や育児仲間によるカウンセリング)などの対人関係療法も含まれ、効果が確認されています。
薬物療法
一般的に、産後うつ病が重症化した場合は薬物療法になります。
薬物療法では抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などが使用されます。
また、原因で述べたようにセロトニンの減少が一因となる場合があり、その場合、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(セロトニントランスポーターによるセロトニンの再吸収作用を阻害して濃度を高める)が用いられる場合があります。
なお、薬物療法では薬物の母乳への移行が懸念されるため、血中動態の確認や、医師による適切な授乳可否の判断が必要です。
※抗うつ薬や睡眠薬の中には母乳による授乳が可能なものもあります。
公開日時:2017年09月09日 11時49分
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