「妊娠高血圧症候群」(妊娠中毒症)の原因と予防法および治療法

カテゴリ:妊娠の基礎知識
タグ:妊娠疾患

妊娠高血圧症候群とは?

妊娠高血圧症候群(旧名称:妊娠中毒症)は妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧が見られる場合や、高血圧に尿蛋白を伴う場合のいずれかで、且つこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものではないものと定義されています。
妊娠高血圧症候群は全身性の血管内皮機能障害を背景とし、血液濃縮血管攣縮によって生じると考えられています。
血管攣縮により末梢血管抵抗(血液の流れに対する抵抗)の亢進が生じ、これにより高血圧や腎機能障害が引き起こされ、血管透過性(蛋白が本来は通さないはずの血管壁から漏れる症状)の亢進に伴い尿蛋白が出現し、これが母体循環血管の減少を招き、結果として胎児胎盤循環が障害され胎児発育不全を引き起こします。
この際、血管内皮機能障害は同時に血液凝固機能を亢進させるため、慢性的な播種性血管内凝固症候群の原因になります。
この疾患は妊娠継続により不可逆性で進行性の病態の悪化が起こるのが特徴です。

血液濃縮

一般的には脱水などにより血液の液体部分が少なくなり、血液の濃度が濃くなる状態を言います。
分かりやすく言うと血液がドロドロの状態です。

血管攣縮

血管が一過性の異常収縮を起こすことを言います。
これにより血液の流れが著しく阻害され(末梢血管抵抗の増加)、高血圧や腎機能障害の引き金になります。
血圧は心拍出量と末梢血管抵抗に比例しますので、血管攣縮により末梢血管抵抗が増えると血圧が上がります。

播種性血管内凝固症候群(DIC)

正常な血管では血管内皮の抗血栓性や血液中の抗凝固因子により血液は凝固しませんが、血管内皮機能障害により、過剰な血液凝固反応が起こり、全身の血管内で血栓が多発する症状です。

妊娠高血圧症候群の種類

妊娠高血圧症候群には以下の4つの種類があります。

妊娠高血圧腎症

妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、且つ尿蛋白を伴い、分娩12週までに正常に復する場合です。

妊娠高血圧

妊娠20週以降に初めて高血圧を発症し、分娩12週までに正常に復する場合です。

加重型妊娠高血圧腎症

以下の3つの症状が該当します。
  1. 高血圧症が妊娠前か妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降に尿蛋白を伴う場合
  2. 高血圧症と尿蛋白が妊娠前か妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降、どちらかあるいは療法の症状が悪化する場合
  3. 尿蛋白のみを生じる腎疾患が妊娠前か妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降に高血圧症を発症する場合

子癇

妊娠20週以降に初めて、てんかんや二次性痙攣ではない痙攣発作を起こした場合です。
発作が起きた時期により妊娠子癇、分娩子癇、産褥子癇が区別されます。
脳血管攣縮による一過性脳虚血や脳血流量の自動調整機能の破綻による脳血流量増加により起きます。
発作は意識喪失、瞳孔拡大、眼球上転、全身性強直性痙攣(後弓反張)、間代性痙攣に移行し、痙攣は1~2分で弱まります。
その後昏睡状態になり、軽症では次第に意識を回復していきます。

症状の分類

症状は以下の基準を基に軽症と重症に分けられます。
軽症重症
血圧収縮期血圧:140mmHg以上、160mmHg未満
拡張期血圧:90mmHg以上、110mmHg未満
収縮期血圧:160mmHg以上
拡張期血圧:110mmHg以上
尿蛋白1日あたり300mg以上、2g未満1日あたり2g以上

原因は?

因子

考えられる因子としては以下が挙げられます。

リスク因子

  • 初産婦
  • 多胎妊娠
  • 高年妊娠
  • 肥満

基礎疾患

  • 高血圧症
  • 糖尿病
  • 腎疾患

病因(仮説)

遺伝的、環境的、免疫学的要因による、子宮らせん動脈への栄養膜細胞層(cytotrophoblast)侵入障害が起こり、血管内皮細胞から絨毛細胞への置換が十分でなくなり、らせん動脈の musculoelastic cost が消失せず維持されます。
これにより子宮胎盤血流の減少が起こり、絨毛細胞の低酸素症(Hypoxia)、そして絨毛細胞障害を生じます。
絨毛細胞障害は白血球を活性化し、血管内皮細胞障害を引き起こし、血液攣縮や血液濃縮を生じさせ、結果として妊娠高血圧症候群に至ります。

出産や胎児へのリスクは?

主に、以下のリスクがあります。

発生する確率は?

全妊婦の4~8%で発症します。
重症例は全妊婦の1~2%です。

予防方法は?

以下の5つのリスク因子が挙げられます。
経産回数以外は、規則正しい生活や適度の運動、バランスのとれた食事とカルシウムの摂取を心がけ、過度の体重増加や過剰な塩分摂取を避けます。
以下の表はリスク因子の高い順に並べています。
因子予防の目安
妊娠初期収縮期血圧(mmHg)130mmHg未満
経産回数初産婦は注意(圧倒的に初産婦に多い)
妊娠初期ヘマトクリット(%)40%未満
非妊時体重(kg)55kg以下、またはBMI25.0未満
妊娠初期拡張期血圧(mmHg)80mmHg未満

検査方法は?

血圧(収縮期血圧、拡張期血圧)、尿蛋白を調べます。
収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上であれば高血圧と診断されます。
尿蛋白は24時間蓄尿による定量法で300mg/日、以上の尿蛋白の場合陽性となります。
なお、妊娠20週以降に初めて高血圧を伴う尿蛋白陽性の場合に妊娠高血圧症候と診断されます。
妊娠20週よりも前に高血圧症がある場合や、尿蛋白陽性のみでは、妊娠高血圧症候とはなりません。

治療方法は?

妊娠高血圧症候にとって唯一の根本的治療は分娩です。
妊娠継続のためには、以下の対処療法を実施します。
  1. 安静
  2. 食事療法(減塩食(塩分7~8g/日))
  3. 薬物療法(降圧薬、硫酸マグネシウム、副腎皮質ステロイド)
  4. 人口早産(上記の治療を行っても下記症状を呈する場合)
    • 重症高血圧(収縮期180mmHg以上、拡張期110mmHg以上)
    • 体重増加が週3.0kg以上
    • 尿蛋白が1日5g以上
    • 胎児 well-being の悪化
    • 胎児発育2週間以上の停止
    • 血小板が10万/μL以下、且つAST、LDHが異常値
    • 血中アンチトロンビン活性が60%未満、且つAST、LDHが異常値

公開日時:2016-09-11 13:07:29

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