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「遺伝性疾患(遺伝子異常症)」の原因と症状および治療法

カテゴリ:妊娠の基礎知識
タグ:胎児異常

遺伝子異常症とは?

遺伝子疾患は染色体異常症と単一遺伝子疾患に大別されます。
染色体異常症は受精卵の細胞分裂の減数分裂時に本来2本で対(XY、XX)でなければならない染色体が1本(モノソミー)や3本(トリソミー)となる事象で、偶発的に起きる染色体の数や構造の異常に起因する遺伝子疾患です。

それに対して、単一遺伝子疾患(遺伝子病)は、染色体の数や構造に異常はなく、遺伝子自体の異常(突然変異・欠陥)や遺伝子の記憶が招く異常です。
一般に言われる遺伝子疾患は遺伝子異常による先天性の疾患(先天性の癌など)ですが、遺伝子記憶(細胞記憶)による疾患は後天性です。
細胞記憶など、遺伝子病は親から子に遺伝するものがあり、例えば家族性腫瘍があります。
※必ず疾患が発現するわけではありません。

劣等遺伝子

人はだれでも突然変異した遺伝子(劣等遺伝子)を一定数持っています。
但しその変異が約60億の塩基対上のどこに存在するかで、どのように現れるか(重篤な病気として現れるか、まったく現れないか)が決まります。

このため誰でも(男性も女性も)遺伝子疾患の子どもができるリスクを持っており、生まれてくる子どもが重篤な症状となるか否かは運次第です。
但し遺伝子異常は卵子よりも精子に起こりやすく、男性側が原因となる場合が多いようです。

メンデル遺伝病

単一遺伝子疾患は親から受け継いだXもしくはYの2種類の内、一方もしくは両方に異常があった場合に発病します。
この母親と父親の両方の遺伝子の相互作用による遺伝子異常をメンデル遺伝病と呼び、次の3種類に分類されます。
メンデル型遺伝病の遺伝形式の種類
種類定義発症確率
常染色体優性遺伝病常染色体上の対になる遺伝子の一方に異常がある場合発症確率1/2
常染色体劣性遺伝病常染色体上の対になる遺伝子の両方に異常がある場合発症確率1/4
X連鎖劣性遺伝病性染色体のX染色体の異常男性のみ罹患(女性の場合はX染色体を2つ持つため一方に異常があっても発症しない)

エピジェネティクス異常症

エピジェネティクスはエピジェネシス(後成説)とジェネティクス(遺伝学)から作られた混成語です。

当初は「個体発生において最終的な形態や構造は初めから何らかの形で存在するのではなく、次第に形成されていく」という漠然とした考えのものでした。
その後「DNAの塩基配列の変化に依らない、染色体の変化から生じる安定的に継承される表現型」と解釈されています。
そしてエピジェネティクス異常症は「遺伝子情報(DNA塩基配列)の突然変異を伴わない、細胞分裂後も継承される遺伝子疾患」を指し、「DNA修飾の異常」とも言われます。

このため、遺伝子記憶による遺伝病とも言われ、例えば、祖母、母、自分と、世代を超えて胃がんを発症する場合などが当てはまります。

エピゲノムと細胞記憶

エピゲノムは「DNAの塩基配列の変化を伴わないで変化した遺伝情報」とされており、DNAの塩基配列に記された一次元的な情報に付加されたより高次の情報総体を意味します。
これは細胞の置かれた環境(栄養条件、内分泌撹乱物質、ストレス、腸内微生物叢、酷暑などの環境因子)により後天的な突然変異(DNA塩基配列の置換や欠失)を引き起こします。

例えば、飢餓状態の妊娠初期を過ごした母親の子どもは肥満傾向となり、精神的な疾病へのリスクも高くなる事、その傾向はその子の子どもや孫にも引き継がれる事(オランダ冬飢餓事件)もエピゲノムと関連していると言われています。

また細胞は分化のための複製と細胞分裂、再構築を繰り返しても元々持っているエピゲノムを維持するため細胞記憶とも呼びます。
これまではエピゲノムはリプログラミング(初期化)されるため世代を超えて引き継がれることはないと考えられていましたが、今日ではリプログラミングをバイパスして引き継がれることが分かっています。
このため、親から子へ、孫へと遺伝子疾患が遺伝(エピゲノム遺伝)する仕組みが明らかになってきました。

原因は?

エピジェネティクス異常症は遺伝子レベルでの不活化(ゲノムインプリンティング)が起きることが分かっています。

ゲノムインプリンティング(ゲノム刷り込み)

性染色体は女性の場合、XXとなり、一方のX染色体が不活化される場合(X染色体の不活化)がありますが、常染色体の不活化は致死的で生体では生じないと考えられてきました。
しかし、父由来染色体上では働くが、母由来染色体上では働かないなど、常染色体上の個々の遺伝子レベルでは不活化が生じることが分かってきており、これはゲノムインプリンティング(ゲノム刷り込み)と呼ばれます。

ゲノムインプリンティングが起きると、本来父由来と母由来の両方の染色体で対をなしている常染色体の内、例えば母由来のX染色体が不活化し、父由来のX染色体のみの構造となった場合、その父由来のX染色体に問題がある場合、遺伝病を発症する事になります。
※DNA塩基配列上のどこで起きるか、父由来と母由来のどちらのX染色体が不活化するかによって現れる症状が異なります。

三毛猫

ちなみに三毛猫のまだら模様は性染色体のX染色体の不活化によるものであり、三毛猫が雌(XX染色体を持つ)なのはそのためです。(雄の性染色体はXYのため三毛猫にはならない)
但しごく稀に雄の三毛猫が生まれる事があり(出生確率は約3万匹に1匹)、大抵は雄であるにも関わらずY染色体の転座によりXXの性染色体を持つか、XXY(クラインフェルター症候群)などの場合です。

症状は?

メンデル遺伝病

メンデル遺伝病で現れる代表的な症状はそれぞれ以下となります。

常染色体優性遺伝病

  • 家族性高コレステロール血症
  • ハンチントン病
  • 家族性腺腫性ポリポーシス

常染色体劣性遺伝病

  • フェニルケトン尿症
  • アルカプトン尿症

X連鎖劣性遺伝病

  • 先天性凝固異常症(血友病)

エピジェネティクス異常症

ゲノムインプリンティング異常症

代表的な疾患として、プラダー・ウィリー(Prader-Willi)症候群があり、以下の4つの特徴的な症状があります。
  • 筋緊張低下
  • 性腺発育不全(不妊)
  • 知的障害
  • 肥満
なお、エピジェネティクス異常症では他にも多くの異常症が確認されており、多くは知的障害を発症します。

多因子性疾患

エピジェネティクス異常と他の因子や環境因子が付加的要因となった多因子性疾患の症状としては以下が確認されています。
  • がん
  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)
  • 統合失調症
  • 先天性心疾患(CHD)
原因の多くは父親の生殖系列での変異(親から受け継いだ変異ではなく、個体で新たに発生した変異)が主原因であり、父親の年齢(長期にわたる精子形成)との関わりが示されています。

検査方法は?

新生児マス・スクリーニング検査として、全新生児に対して、単一遺伝子疾患(メンデル遺伝病)の内の先天性代謝異常症(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、先天性甲状腺機能低下症)の血液検査によるスクリーニング検査が実施されます。
一方、エピジェネティクス異常の検査方法はまだ一般的ではなく、Prader-Willi症候群などの特定の疾患を診断するための検査(PCR:polymerase chain reaction法)のみが実施されていますが手間と費用がかかるのが課題です。
これらからの日進月歩の開発と普及が期待されています。

治療方法は?

エピジェネティック・ドラッグとして、第1世代としてDNMT阻害薬、HDAC阻害薬、第2世代として、アイソザイム選択的HDAC阻害剤、ヒストン脱メチル化酵素阻害剤KDM、ヒストンメチル化酵素阻害剤EZH2、DOT1L阻害剤などの開発が進められています。

公開日時:2017-09-14 01:10:52

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