「新生児仮死」とは?赤ちゃんが低酸素状態になるのはどんな場合?

新生児仮死とは?

新生児仮死(Neonatal asphyxia)は出生時に新生児に見られる呼吸循環不全を主徴とする症候群と定義されており、赤ちゃんが十分な酸素を得られず窒息状態に陥り、脳や心臓などに重篤な症状が現れる疾患です。

胎児ジストレスとの違い

胎児仮死と胎児ジストレス(Fetal distress)は異なります。
胎児仮死が分娩前後に赤ちゃんに十分な量の酸素がない場合に発生するのに対し、胎児ジストレスは胎児の状態が良くない事を示す、出産前または出産中に現れる妊婦の兆候を指します。
但し、明確に定義されておらず曖昧なため、この名称はあまり使用されません。

原因は?

原因は主に以下の2つの場合に分けられます。

胎児低酸素血症から来るもの

主に、以下の因子による胎児機能不全に続発して起こります。
この内、妊娠高血圧症候群の妊婦の出産では発症率は非常に高くなります。

  • 臍帯因子(臍帯異常)
  • 胎盤因子(低重量胎盤、過期妊娠胎盤、常位胎盤早期剥離)
  • 母体因子(糖尿病、心肺疾患、喘息、過強陣痛、妊娠高血圧症候群)
  • 子宮因子
  • 胎児因子(軟便吸引症候群)

出生後の仮死を来すもの

早産による呼吸窮迫症候群や先天異常、母体への薬剤投与が原因で起こります。

初期症状は?

主に以下の症状が現れます。

  • 呼吸障害
  • 循環障害
  • 筋緊張の低下
  • 痙攣
  • チアノーゼ

※新生児仮死の場合、出生後の赤ちゃんは泣かず、蒼白な状態で静かに生まれてきます。

出産や胎児へのリスクは?

軽度または中等度の窒息のある赤ちゃんは完全に回復することがある一方、窒息時間が長く、細胞が長い時間十分な酸素を得ていない赤ちゃんは、アシドーシスとなり、脳や心臓、肺、腎臓、腸、その他の器官に後遺症が残る可能性があります。
※アシドーシスは血液中に過剰な酸が蓄積する状態(pHが7.0未満)です。
新生児が5分間近く呼吸停止状態に陥ると、知的障害、脳性麻痺、発作、その他の問題を含む脳損傷のリスクが非常に高くなります。
また、未熟児の窒息では、脳性麻痺や発達障害、ADHD(注意欠陥多動障害)、視力障害の原因となり、最も重篤な症例では、窒息により多臓器不全や死亡に至ることがあります。

発生する確率は?

胎児仮死は1,000人の新生児の内の約4人に発生します。
また、5歳未満の子供の死亡率は約38%です。

予防方法は?

胎児仮死自体の根本的な予防方法はなく、原因疾患を予防する事になります。

検査方法は?

出生後1分と5分に、以下のアプガースコアを用いて評価し、当てはまる項目の合計スコアで程度(スコアが高いほど軽症)を診断します。

4~7点:軽症(第1度)仮死
3点以下:重症(第2度)仮死

アプガースコア
観察項目0点1点2点
心拍数なし100bpmより下100bpm以上
呼吸なし緩徐、不規則良好、啼泣
筋緊張なし四肢を僅かに屈曲活発に運動
反射なし顔をしかめる咳、くしゃみ
皮膚色蒼白、全身チアノーゼ四肢のみチアノーゼ、躯幹淡紅色全身淡紅色

※bpmはbeats per minute(1分間あたりの拍動数)

但し、脳性麻痺の新生児の場合、出生後1分と5分の評価では正常値を示す事があり、必ずしも確実な診断ではありません。
このため脳性麻痺の場合は、その原因となる急性低酸素症を、分娩直後の臍帯動脈血ガス分析(臍動脈血から混合性アシドーシスの存在有無を確認)で診断します。
※混合性アシドーシスは pHが7.0より下で且つ、不足塩基量が12mmol/L以上の場合となります。

治療方法は?

胎児仮死の蘇生治療は、まず室温の保たれた環境において、開放式保育器に新生児を乗せ、乾いたタオルで児の羊水や血液を拭き取り、保温を行います。
次に、気道(口腔・鼻腔)の吸引を行い、気道の確保を行います。但し自発呼吸がある場合は不要です。
もし自発呼吸がない場合、バッグマスク換気による補助呼吸、もし効果がない場合は気管内挿管による換気を実施します。
※バッグマスクはバッグから空気を送ることで人工呼吸を行うことができるマスクです。

公開日時:2017-07-24 22:23:25

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