「尿閉」(排尿障害)の原因と初期症状および治療法

カテゴリ:出産の基礎知識
タグ:産褥期異常

尿閉とは?

尿閉は膀胱や尿道の障害によって排尿できなくなる状態で、特に、分娩後や手術後に比較的多く見られる症状になります。
産後に起きる尿閉は産後尿閉とも呼びます。

原因は?

分娩に伴う、主に以下の原因により引き起こされます。
  • 分娩時の子宮からの圧迫による膀胱筋の麻痺
  • 腹壁弛緩による腹腔内圧の低下による膀胱充満感の消失
  • 膀胱・尿道・腟・外陰部の損傷
  • 疼痛による膀胱括約筋の痙攣

初期症状は?

尿閉の主な初期症状は以下となります。
  • 膀胱充満感はあるが明確な尿意がない(膀胱知覚の低下
  • 膀胱充満感や尿意がない(膀胱知覚の欠如
  • 排尿の開始が困難であったり、排尿の準備ができてから排尿が開始するまでに時間がかかる(排尿遅延
  • 排尿後も尿が残っている感じがする(残尿感

出産や胎児へのリスクは?

尿閉自体のリスク

通常は時間と共に自然治癒する症状であり、基本的には大きなリスクはありませんが、排尿が滞っている場合、子宮収縮不全や膀胱炎などの尿路感染症を引き起こす可能性があります。
また、極めて稀ですが、導尿を続けて5日以上経っても軽快して来ない場合、自分での導尿の実施(自己導尿、間歇導尿)となったり、泌尿器科への通院が必要になる場合があります。
もし膀胱から尿が逆流(膀胱尿管逆流)した場合は、腎機能が低下し、腎不全に至る可能性があります。

自己導尿とは?

自己導尿は尿道留置カテーテルに対して間歇導尿とも呼ばれます。
自己導尿は自分で尿道から膀胱内にシリコン製の細い管(カテーテル)を挿入して、尿を体外に排出する方法で、1日に4~5回程度実施します。
一般的に自己導尿がきちんとできるようになるまでには4ヶ月程度かかります。
尿道留置カテーテルよりも感染症の確率は低いとされていますが、実施前の手洗いやカテーテルの消毒の徹底など、感染症には細心の注意を払う必要があります。

治療時のリスク

病因での治療時のリスクとしては、導尿時のカテーテルの挿入による感染症のリスクがあります。
もし導尿時の無菌操作が十分ではない場合、尿路感染症を引き起こす可能性があります。

予防方法は?

尿閉の発生を予測することは困難であり、根本的な予防方法はありません。

検査方法は?

膀胱内の尿の貯留の確認

腹部の超音波検査による膀胱の拡張有無や、波動性(液体がある感じ)があるかを見ながら、膀胱内に尿が貯留していないかを確認します。
また、子宮底の上昇が見られないかも確認します。(膀胱が充満することによる子宮の上方牽引が起きる可能性があるため)
尿の貯留が見られる場合、導尿を実施し、排出される尿量(残尿量)を測定します。

疼痛の確認

疼痛がある場合、緊張が高まり、それにより排尿困難を来すことがあるため、会陰の疼痛の有無も確認します。

治療方法は?

主な治療法は以下となります。

6~8時間毎の導尿

排尿困難の場合で、排尿後残尿量が200mL以上の場合、24時間、カテーテルを留置して膀胱を完全に空にした後、膀胱の緊張と感受性を回復させます。
そして、24時間後に自然排尿を実施し、もし残尿量が200mL以下になれば、定期的な残尿測定を実施し、残尿量が50mLを下回れば治癒したと判断します。
しかし自然排尿後の残尿量が200mLを超えている状況が続く場合、カテーテルを留置したまま24時間後に残尿測定を繰り返し行い、4~5日間は様子を見ます。
産褥期の排尿困難は殆どが一過性であり、通常は時間とともに自然治癒します。

膀胱部の温罨法

温罨法(おんあんほう)は局所的な筋肉の緊張の緩和や、血管の拡張を促す事で、一般的には、疼痛や炎症を起こしている部位に対して行う治療法です。
具体的には、蒸しタオルなどで膀胱付近を温める事で、疼痛を緩和させたり、排尿を促進させます。
またリラックスさせ緊張を緩和させる効果もあります。

排尿障害治療薬(α1遮断薬)の投与

前立腺や尿道の筋肉はアドレナリンの作用によって収縮しますが、このアドレナリンの作用をブロックして前立腺や尿道の筋肉の過剰な収縮を和らげる作用のあるα1遮断薬を投与します。

鎮痛薬投与

会陰の疼痛が強い場合は、鎮痛薬を投与します。

公開日時:2017-07-16 18:22:51

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