「産褥出血」とは?高年初産婦の痛みが殆どない産道出血に要注意
産褥出血とは?
産褥期における、分娩24時間以内の異常出血を産褥早期出血、24時間以降の異常出血を産褥晩期出血と呼びます。
原因は?
異常出血が起きる主な原因は、以下のように子宮収縮不全によるものや何らかの産道異常によるもの、裂傷縫合部の破裂によるものの3つに分けられます。
発生頻度が最も高いのは子宮収縮不全によるものですが、リスクが最も高いのは腟壁血腫、外陰部血腫などの産道異常で、予後不良のリスクが高い傾向にあります。
産褥出血の主な原因
- 子宮収縮不全
- 胎盤片・卵膜片・凝血塊の子宮内残留
- 子宮筋の過度の伸展(多胎、羊水過多、巨大児などが因子となる)
- 分娩経過の異常(遷延分娩、急速遂娩、帝王切開などが因子となる)
- 子宮の異常(奇形、後屈、子宮筋腫、胎盤ポリープ、子宮癌などが因子となる)
- 産道異常
- 子宮腟部びらん
- 腟壁血腫・外陰部血腫(巨大児の分娩、回旋異常、吸引分娩・鉗子分娩、腟の急速な伸展)
- 軟産道強靭(高年初産婦でリスクが高い)
- 妊娠静脈瘤
- 妊娠高血圧症候群
- 裂傷結合部の破裂
- 分娩後の過剰な運動
- 強度の貧血
- 低栄養状態
初期症状は?
血腫が増大することにより、腟内や外陰部、排尿や排便時に拍動性の疼くような痛み(疼痛)があります。
但し、腟壁の上部の血腫では、疼痛などの自覚症状が殆どありません。(これが後述するように腟壁血腫による出血性ショックのリスクを高くしている理由です)
出産や胎児へのリスクは?
産道出血は一般的に分娩後発症することが多いですが、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)や高年初産婦、妊娠静脈瘤の因子を持つ妊婦の場合、正常な分娩後であっても突然発生する場合があります。
特に産褥出血の中でも最もリスクの高い、腟壁の上部の血腫による出血性ショックは、リスク要因が高い1つの理由として、初期症状が殆どなく、もしあっても外陰部血腫の縫合による痛みと区別がつきにくく混同しがちであり、血腫がかなり増大しないと貧血などの症状がでないため、対処が遅れ、結果として大量出血に至り、出血性ショックを引き起こす場合があるためです。
また、出血性ショックだけではなく、播種性血管内凝固症候群(産科DIC)という重い合併症を引き起こすことがあり、極めて危険な状態に至る可能性もあります。
このため、産褥出血の中でも、腟壁の上部の血腫による大量出血は非常にリスクが高いと言えます。
※播種性血管内凝固症候群は、「過凝固に伴いできる血栓による血管の閉塞」と「凝固阻止因子の過剰分泌による止血しにくい出血」という相反する状況が同時に起き、過凝固と二次線溶が繰り返されることによる臓器不全や出血を引き起こす症状です。
なお、胎児の娩出後の症状であるため、産褥出血による胎児への直接の影響はありません。
予防方法は?
妊婦側でできる根本的な予防方法はありません。
但し、子宮収縮不全に関しては、因子を持っている産婦の場合はある程度の予測ができるため、十分な準備をした上で分娩に臨めます。
検査方法は?
子宮収縮不全であれば、子宮の硬度や子宮底の高さや位置などに異常が無いか、悪露の異常(量や色、性状、凝血塊、卵膜片、胎盤片が無いか、臭いはどうかなど)や発熱、脈拍、皮膚の色などから、異常を示す徴候がないかを観察します。
治療方法は?
それぞれの症状に応じた対処方法(止血)を実施します。
各症状の治療については、関連する以下の記事をご参照ください。
公開日時:2017年01月15日 18時15分
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