「腟壁血腫」とは?初産婦は産後の僅かな肛門痛も見逃さない事が大切
腟壁血腫・会陰血腫とは?
腟壁血腫・会陰血腫は腟壁粘膜下や会陰皮下に形成される血腫を言いますが、この血腫自体は特定の分娩方法に限らず、通常分娩、正常な分娩時にも起こります。
原因は?
急速な分娩進行による腟壁の急激な伸展や、巨大児などによる過度な伸展により腟壁に裂傷を生じ、腟中部から下部の腟壁粘膜下の血管が破綻・断裂することで血腫が生じます。
また、会陰裂傷時の縫合不全などにより発生する場合もあります。
リスク因子
腟壁血腫・会陰血腫の主なリスク因子は以下の3点です。
- 初産婦
- 会陰切開術
- 鉗子分娩
初期症状は?
内出血であるため、初期症状(臨床症状)は殆どありません。
一般的には血腫が増大することで、肛門痛や便意を催します。
なお、分娩終了後、2時間くらい経過してから会陰や肛門周辺部に拍動性の痛みを生じる場合もあります。
出産や胎児へのリスクは?
腟壁血腫のリスクは、多くの場合で、臨床症状が殆どなく出血性ショックを呈するまで気づかない可能性がある点、出血部位の特定が極めて困難(特に腟上部の血腫)であり縫合による止血が難しい点の2点です。
腟上部で発生した血腫の場合、殆どの場合、無症状で進行するため、貧血や出血性ショックを引き起こす可能性があります。
そのため、産褥婦側でも、僅かな肛門痛などの徴候であっても見逃さず、医師や助産師に伝えることが大切になります。
発生する確率は?
「日本産科婦人科学会」の資料では、9000分娩中、初産 43例 (91.5%)、経産 4例 (8.5%)という統計データがあるようです。
予防方法は?
正常分娩時にも起こり得る疾患であり、根本的な予防方法はありません。
検査方法は?
一般的には視診や触診による検査となります。
触診において、会陰や腟壁が膨隆しているか、弾力性のある腫瘤があるかを調べます。
治療方法は?
腟壁を大きく切開して血腫を除去します。
もし粘膜下に明らかな出血点が認められれば、そこを縫合して止血しますが、不明な場合が多く、その場合はドレーンを挿入、留置して血液を排出します。
また、腟内にガーゼを充填することで圧迫止血を行います。
つまりドレーンによる血腫からの血液の排出と、ガーゼによる止血の2段構えの治療となります。
後腹膜腔血腫
腟上部の血腫では、後腹膜腔(横筋筋膜と壁側腹膜の間の空間)に血腫が形成される場合(後腹膜腔血腫と呼ぶ)があり、その場合は開腹手術が必要になります。
※内臓は皮膚、皮下脂肪、筋膜、腹膜の4重構造で守られており、この筋膜と腹膜の間に血の塊ができてしまうのが後腹膜腔血腫です。
開腹手術で腟傍結合組織にガーゼを充填留置して圧迫止血を行います。
なお、止血が困難な場合、出血箇所の上流(内腸骨動脈)を縫合糸で縛って止血(内腸骨動脈結紮術)する場合もあります。
公開日時:2017年01月10日 15時28分
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