「回旋異常」とは?赤ちゃんの正常な姿勢(胎勢)や向き(胎向)は?
回旋異常とは?
回旋異常は、正常回旋以外での回旋による分娩を言い、分娩の段階において、それぞれ第1回旋異常、第2回旋異常に分けられます。
第1回旋異常は胎児の「姿勢」(胎勢)、第2回旋異常は胎児の「向き」(胎向)の異常です。
正常な回旋とは?
まず、正常な胎勢と胎向は以下となります。
正常な胎勢
通常は、赤ちゃんは背中を丸め、顎を引き、腕組みをした格好で出てきます。
そのため、屈位になり、後頭部(小泉門)から出てきます。
この正常な胎勢を屈位:後頭位と呼びます。
正常な胎向
正常な回旋では、赤ちゃんは第1回旋で横向きになった状態で骨盤入口部を通過し、更に第2回旋で下向きになって、顔を母体の背中側に向けて(母体が仰向けの時、胎児はうつ伏せ)骨盤峡部を通過して出てきます。
この正常な胎向を前方後頭位と呼びます。
第1回旋異常
第1回旋異常は胎勢(赤ちゃんの姿勢)の異常を指します。
胎勢異常の場合は背中は丸まっておらず、まっすぐあるいは反った姿勢(反屈位)であり、後頭部(前頭位)や額(額位)、顔(顔位)から出て来る状態を言います。
正常回旋時(屈位:後頭位)の児頭の最小周囲径は32cmですが、これらの異常では周囲径が大きくなり、骨盤の通過が困難になります。
反屈位:前頭位
頻度が最も多い回旋異常(全分娩の1~1.5%)となり、赤ちゃんの背中はまっすぐで、顎を引いていない状態のため、前頭部(大泉門)が先進部となります。
周囲径は33cmです。
この場合、一般的には、母体の腹側に顔を向けての娩出(前方前頭位)となります。
反屈位:額位
赤ちゃんがさらに顎を上げ、額が先進部となる状態です。
周囲径は35cmになります。
一般的には経腟分娩は不可能であるため、帝王切開による分娩になります。
反屈位:顔位
赤ちゃんが目一杯顎を上げ(空を見上げるような格好)、顔部分が先進部となる状態です。
周囲径は34cmになります。
下顎骨の先端部の頤(おとがい)を先進部として出てくる場合(頤部前方顔位)は、何とか経腟分娩が可能な場合もありますが、頤部後方顔位になると、経腟分娩は不可能であるため、帝王切開になります。
第2回旋異常
第2回旋異常は胎向(赤ちゃんの向き)の異常を指します。
胎向異常では顔ではなく後頭部を母体の下側に向けて出て来る後方後頭位と横向きに出てくる低在横定位に分類されます。
後方後頭位
第2回旋時に児頭が正常とは逆の方向に回旋する事で、赤ちゃんの後頭部(小泉門)が母体の後方に向いている状態です。
多くの場合は、前方後頭位となり、経腟分娩に至りますが、前方後頭位のままで正常に娩出されるのは稀です。
低在横定位
第2回旋時に児頭が回旋しないために、第1回旋時の横向きのまま骨盤峡部を通過しようとし、骨盤底に達する状態です。
この場合、左右の頭頂骨を結ぶ結合部である矢状縫合(しじょうほうごう)が骨盤黄経に一致して娩出が停止してしまいます。
もしそのまま自然回旋が行われない場合、吸引分娩になる可能性があります。
なお、胎児の顔面損傷のリスクがあるため鉗子分娩は行いません。
扁平胎盤で起きやすい回旋異常です。
初期症状は?
回旋異常の徴候としては微弱陣痛があります。
また、次の徴候が見られる場合があります。
- 腹部の触診で胎児の背中が母体の背中側にある
- 胎児の心音が不明瞭であったり遠くに聞こえる
- 分娩早期に早発一過性徐脈がある
- 産婦に腰部の強い痛みがある
- 分娩の進行が遅い
出産や胎児へのリスクは?
回旋異常の多くは、分娩経過中に正常回旋に修正されて分娩されますが、もし修正されない場合、遷延分娩や分娩停止に至る事があります。
この場合、母子ともにリスクがあります。
経腟分娩が不可能と判断した場合は、緊急帝王切開が行われます。
検査方法は?
通常は、内診や触診で矢状縫合の位置、大泉門、小泉門の位置を確認して診断します。
治療方法は?
体位による回旋異常の矯正を試みる事ができます。
児頭が骨盤腔に到達する前であれば、側臥位や四つん這いの体位を試みます。
低在横定位の場合は、胎児の後頭部が下側になるように側臥位を試みます。
公開日時:2017年03月26日 13時27分
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