自宅や外出先で「前期破水(PROM、PPROM)」が起きたら?

前期破水とは

前期破水(PROM)は分娩の開始前に卵膜の破綻を来した場合を指します。
全分娩の内、5~10%で発生します。
症状としては、少しずつ羊水が漏れ出す場合や、一気に大量の羊水が流出する場合があります。
破水自体は分娩時には必ず起こる(自然破水)または起こす(人工破水)ものなので、異常ではありませんが、病院以外の場所で起こる場合、細菌感染などのリスクがあります。
また正産期を過ぎていない場合は、早産になるため未熟児や死産になる可能性もあります。
なお、分娩の開始前であっても子宮口の全開大以前に破水した場合を、特に早期破水と呼びます。 

すぐに産婦人科に連絡してタクシーを呼ぶ

後述するように破水後は陣痛が発来する可能性があるので、すぐに産婦人科に連絡して状況を伝え、医師の指示を仰ぎます。
直ちに病院へ向かう事になるはずですが、前期破水は基本的には救急車の適用範囲ではないため、タクシー等で病院に行きます。
但し顕著な出血が見られる場合など、何らかの異常がある場合や、子宮内感染症の場合は、救急車を呼びます。

また、羊水で乗り物の室内を濡らさないようにお産用の滅菌パッド(産褥パッド)を用意しておくか、無ければレジャーシートや夜用ナプキンでも代用出来るようです。
※どれを使うかは漏れ出る羊水の量にもよります。

早産と正期産

破水はどの時期に起こるかにより対処方法が大きく異なります。

妊娠37週以降での前期破水をPROM(Premature rupture of membranes)と呼びます。
妊娠37週を過ぎていれば正期産です。基本的に赤ちゃんはいつ生まれても大丈夫です。

妊娠37週未満での前期破水をPPROM(Preterm premature rupture of membranes)と呼び、早産の40%を占めます。
妊娠34週~37週の場合は、早産ですが正産期に近ければ、概ね予後に大きな問題はありません。
妊娠22週~34週の場合も早産に含まれますが、予後に赤ちゃんに何らかの障害が出る可能性が高くなります。
切迫早産による主な合併症は、細菌性髄膜炎や敗血症などの細菌感染、肺の形成が未熟な事(肺低形成)による呼吸障害(呼吸窮迫症候群等が挙げられます。

なお、妊娠22週未満の場合は流産になります。
そのため、早産や感染症,胎児仮死を予防しながらの妊娠継続が必要になります。

前期破水の区分と対処方法
妊娠週数破水区分出産区分説明
妊娠37週以降PROM正期産感染症に気をつけ、48時間以内に陣痛が発来すれば、原則として赤ちゃんへの影響はない
妊娠34週~37週PPROM早産赤ちゃんが生存できる可能性は高いが、何らかの障害を持っている可能性がある
妊娠22週~34週PPROM早産妊娠28週以降の場合は生存率は高くなるが、何らかの障害を持っている可能性が高い
妊娠28週未満では妊娠継続が必要
妊娠22週未満PPROM流産妊娠継続が必要

どのような場合に前期破水が起こるか

最も一般的な前期破水の要因は胎膜の強度低下によるものであり、その原因としては細菌感染(子宮内感染症、絨毛膜羊膜炎)や羊水過少子宮奇形、血流の低下、ホルモンバランスの低下等が挙げられます。
絨毛膜羊膜炎はクラミジア、淋病等の腟内の細菌が上行性感染することにより引き起こされ、胎児へも感染する可能性があるため、早急な対処が必要となります。
また、喫煙(受動喫煙も含む)も前期破水への関連性が確認されています。

検査方法

腟鏡診により羊水の流出が無いかを確認します。
また、通常は腟内は酸性ですが、羊水はpH7.1~7.3の弱アルカリ性であり、BTB試験紙法で確認(青色に変化)できます。
また、近年では羊水中や卵膜中に存在するインスリン様成長因子結合蛋白1型(IGFBP-1)αフェトプロテインを調べる事で確認できるようになっています。

前期破水の症状

水っぽいおりもの(水様帯下)が認められます。
また、破水により羊水過少となった場合、臍帯が圧迫され、変動一過性徐脈が出現することがあります。
また、分娩が近づくと浮動していた児頭は下降することで骨盤入口部で固定されますた、もし児頭が固定する以前に破水した場合は臍帯脱出のリスクもあります。
子宮内感染症では、破水後、長時間分娩が行われない場合、腟からの上行性感染により子宮内感染症に至る可能性があります。
これは母児ともにリスクの高い疾患です。

前期破水後の胎児の状態

破水は、胎児が収められている、羊水で満たされた胎膜(卵膜)が破れ、羊水が流出する事を示します。
胎児は無菌の羊水の中で常に浮かんだ状態であるため、外からの衝撃や細菌から守られ、また自由に動き回ることができます。
しかし破水により羊水が無くなれば胎児が細菌に感染したり、頭部が下(子宮頸部)に落ちてしまい、へその緒が圧迫されることにより赤ちゃんへの血液供給ができなくなる等、胎児ジストレスの危険性があります。
また、羊水中は無菌状態であり、赤ちゃんを細菌感染から守っていますが、破水後は外部からの細菌の侵入による絨毛膜羊膜炎などの胎児への細菌感染に特に気をつける必要があります。

破水後の陣痛

また、破水により子宮の収縮が誘発され、通常は24時間以内に陣痛が発来または強まるため、すぐに分娩も含めた対処が必要になります。
正産期(妊娠37週)を過ぎていれば通常は分娩になりますが、正産期未満の場合は、早産による胎児への障害のリスクがあるため、分娩の進行状況や感染有無,胎児仮死等の状況を踏まえて妊娠継続か新生児特定集中治療室(NICU)での治療等、どのように対処するかは医師の判断になります。

洗浄してはいけません

破水により羊水が溢れても細菌感染を防ぐため、体を洗浄してはいけません。
なお、病院での分娩時においても、人工破水を実施する場合は事前に滅菌処理を施します。

羊水の色と匂い

羊水は通常は黄色がかった透明色をしていますが、赤ちゃんの軟便により緑がかっている事があります。
※軟便は通常緑色をしています。
また、羊水に血が混じっている場合は、胎盤が損傷している可能性があります。
なお、悪臭がする場合は、子宮内感染症の可能性があります。

公開日時:2014-05-05 10:32:53

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