「サイトメガロウイルス(CMV)」とは?全妊婦の70%がIgG陽性?
サイトメガロウイルスとは?
胎児に先天性異常を起こす可能性があるのは、妊婦がサイトメガロウイルス(CMV)に初感染、再感染、あるいは同ウイルスが再活性化し、経胎盤感染した場合となります。
妊婦がサイトメガロウイルスに初感染すると、先天性巨細胞封入体症(CID)を引き起こします。
先天性巨細胞封入体症は種々の臓器に核内封入体を有する巨細胞が出現する症状で、脳内石灰化や精神運動発達遅延、網脈絡膜炎、感音性難聴、小頭症、貧血、血小板減少、黄疸、肝脾腫などを生じます。
なお、現在は有効な治療方法はありません。
感染ルートは?
母体側の主な感染ルートは、飛沫感染、接触感染、性行為感染です。
感染源としては子どもの唾液や鼻汁、尿などがあり、子どもの飲食やおむつ交換、歯磨きなどの世話で手に付着し、感染するケースが一般的です。
また性交時にも感染する可能性があります。
抗体を有していても、再感染がない場合、時間とともに抗体の力(抗体価)は減少していくため、再感染の可能性が高まります。
一旦サイトメガロウイルスに感染すると、抗体産生後も全身の臓器に潜伏し、抗体価の減少により経胎盤感染で胎児に感染する可能性があります。
初期症状は?
母体、胎児、新生児ごとの症状は以下のとおりです。
母体 | 原因不明の発熱、発疹、肝機能障害、羊水量の異常 |
---|---|
胎児 | 子宮内胎児死亡、胎児発育不全、脳室拡大、胎児水腫、腹水、小頭症、肝脾腫肥大、腸管高輝度エコー像 |
新生児 | 点状出血斑、肝脾腫大、脳室拡大、小頭症、上衣下嚢胞、低出生体重児(light for date) |
※低出生体重児は、出生時に体重が2500g未満の赤ちゃんです。
出産や胎児へのリスクは?
母体側は、胎児が羊水をうまく飲めずに羊水過多となる可能性があります。
胎児側は、上述したように、子宮内胎児死亡、胎児発育不全、脳室拡大、胎児水腫、腹水、小頭症、肝脾腫肥大のリスクがあります。
先天性上衣下嚢胞について
上衣下嚢胞は脳の異常で、側脳室の上衣下層(脳室上衣下胚層)に嚢胞が発生する症状で、脳室内出血を引き起こす可能性があります。
しかし、現時点で脳室内出血の有効な治療法は確立されていません。
予防方法は?
サイトメガロウイルスの感染予防法としては、石鹸を用いて手洗いを十分にすること、性交時にコンドームを使用することなどが挙げられます。
発生する確率は?
サイトメガロウイルスの経胎盤感染は全出生の内、0.4~1%の確率で発生します。
また、その内の85~90%は出生時に無症状です。
感染児の症状の割合としては、感音性難聴、運動障害、知能障害が出生時症候性感染児の90%、出生時非症候性感染児の5~15%を占めます。
検査方法は?
妊婦健康診査などで、CMV IgG抗体検査にてサイトメガロウイルスの感染有無を調べます。
妊娠初期から妊娠16週までにCMV IgG抗体検査で陽性であった場合、IgM抗体も測定し、それも陽性であった場合、さらに、IgG avidity測定を行い、これが低値である場合、妊娠中の初感染が疑われます。
妊娠16~18週の検査で全妊婦の約70%がCMV IgGが陽性ですが、IgMが陽性であるのは、CMV IgG陽性者の約4%程度です。
また、実際に初感染であるのはIgM陽性者の30%程度です。
検査の回数としては、妊娠初期、妊娠後期の2回か、妊娠初期、妊娠16~18週、妊娠後期の3回です。
また、胎児への先天感染が疑われる場合は、新生児尿CMV PCR検査や眼底検査、超音波断層法、CT、MRI、髄液PCR、聴性脳幹反応(ABR)検査などを実施します。
治療方法は?
根本的な治療法は確立されておらず、対処療法になります。
※妊娠21週未満にCMV初感染した母体へ、免疫グロブリン静脈内投与で先天感染の発生率を下げられたという報告例もありますが、治療例は殆どありません。
公開日時:2016年05月08日 17時46分
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