「成人T細胞白血病(ATL)」とは?特に感染割合の高い地域は?
成人T細胞白血病とは?
成人T細胞白血病(ATL)は白血病ウイルスの一種であるヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)の感染によって引き起こされる血液の癌です。
現在は妊婦健康診査の標準検査に含まれるHTLV-1抗体検査で感染有無が分かります。(但し偽陽性の場合もあります)
ATLは40歳以上で年間1000人に1人の割合で発症しています。
現時点では、成人T細胞白血病の有効な治療方法はなく、発症後の予後は不良です。
感染者の地域差
なお、ATLは感染者の割合に地域差があり、九州を中心とする西南日本、紀伊半島、三陸海岸、北海道などに比較的多い状況です。
但し居住地を変更する場合があるため、大都市圏においても発生しており、近年は増加傾向にあります。
感染ルートは?
妊婦の感染ルート
主な感染ルートは以下になります。
感染ルートで最も多いのは母子感染であり、母乳による感染が殆どです。
- 輸血
- 性行為
- 母子感染
母子感染のルート
母子感染の殆どは、母乳を介して起こります。
初期症状は?
成人T細胞白血病の初期症状は殆どありません。
しばしば、以下の症状が現れます。
- 全身のリンパ節の腫れ
- 肝臓や脾臓の腫大
- 皮膚紅斑
- 皮下腫瘤などの皮膚病変
- 下痢や腹痛などの消化器症状
出産や胎児へのリスクは?
成人T細胞白血病キャリアの母親が母乳を与えた場合、4ヶ月以降もそのまま母乳を与えた場合は母乳感染し、赤ちゃんもキャリアとなります。
予防方法は?
母子感染を確実に予防する方法は現在ありません。
母子感染は母乳を介して起こる割合が全体の20%を占めるため、母子感染率を低下させるためにインフォームドコンセントを通じて以下が実施されます。
- 人工栄養(母乳感染を予防するために断乳します)
- 短期母乳(生後3ヶ月以内のみ母乳を与えます)
- 加工母乳(搾乳して一定期間冷凍保存した母乳を与えます)
※短期母乳は3ヶ月以内であれば、母体からの移行抗体が存在するため感染率は低いためです。(3ヶ月以内の感染率は約3%ですが、4ヶ月以降になると急激に増加します)
※加工母乳は冷凍母乳であり、-20℃で24時間冷凍させたものを温めて与えます。
但し断乳し、一切母乳を与えない場合であっても、感染確率はゼロにはなりません。
検査方法は?
血液検査で調べます。
スクリーニング検査では偽陽性となる場合もあり、二次検査ではウェスタンブロット法が用いられます。
なお、ATL検査(HTLV-1抗体検査)は、2010年10月より、妊婦健康診査の標準検査項目に含まれるようになりました。
その理由は潜伏期間が長い場合があるためです。
ウェスタンブロット法
ウェスタンブロット法をざっくり言うと、電気泳動でゲルとタンパク質を分離し、タンパク質を抗体と反応させてウイルスを検出します。
タンパク質を分離した際、タンパク質をメンブレンに移動して固定化し、ブロット(ブロットメンブレン)を作製するのが特徴です。
治療方法は?
根本的な治療方法はなく、抗癌剤などの投与により進行を遅らせる治療(化学療法)が実施されます。
しかし、ATL細胞には、抗癌剤が最初から効きにくい、あるいは途中から効きにくくなる性質があり、化学療法に抵抗性を示す場合があり、このため予後は極めて不良なのが現状です。
公開日時:2016年05月29日 15時58分
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