「先天性トキソプラズマ症児」とは?猫を飼っている未感染妊婦は注意
トキソプラズマとは?
トキソプラズマは猫を終宿主(しゅうしゅくしゅ)とする人畜共通感染性の細胞内寄生性原虫で、猫を飼ったことがある人はよく知っているかもしれません。
なお、トキソプラズマは人から人への感染はありません。
感染ルートは?
感染した動物の精肉摂取や糞尿との接触(経口・経気道感染)によって感染します。
具体的には加熱が不十分な肉に生存するシストや、土や猫の糞に存在するオーシストが妊婦に経口で初感染することで妊婦が寄生虫血症を生じ、胎盤への感染・増殖、胎児の脳への感染を引き起こします。
※シスト、オーシストは原虫の感染形態であり、シストは原虫が皮膜で覆われた一時的な自発活動休止状態を指し、オーシストはオス・メスの生殖体が合体して皮膜で覆われた状態を指します。
このため、妊娠中の母親が初感染すると、胎児に感染(胎内感染)し、先天性トキソプラズマ症児になる可能性があります。
なお、母体感染後、胎児感染には数ヶ月を要するため、早期の治療で胎児感染を防げる可能性があります。
また、初感染であっても、必ずしも胎児感染するとは限りません。
初期症状は?
殆どの場合において母体側は無症状です。
但し、感染者の10~20%の方に、リンパ節の腫れや下痢、発熱、涙・鼻水・筋肉痛などのインフルエンザに似た症状が2~3日現れる場合があります。
出産や胎児へのリスクは?
妊娠初期ほど感染のリスクが高く、流産や胎内死亡、先天性トキソプラズマ症を発症する可能性が高くなります。
なお、出生時には無症状であっても、成人までに網脈絡膜炎や神経症状が現れる事があります。
先天性トキソプラズマ症
主症状として水頭症や小頭症、網脈絡膜炎、小眼球症、脳内石灰化、肝脾腫があります。
予防方法は?
まず、猫を飼っている人は、妊娠前にトキソプラズマ抗体を持っているかの検査を受け、もし妊娠前に感染している場合は体の中にすでに抗体ができているため、基本的に胎児への影響はありません。
未感染の方の場合は、感染対策として以下が推奨されます。
- 食肉類は十分に加熱する
- 生肉や生ハムを食べない
- 生肉や野菜、果物などを扱った調理器具は洗剤と温水で十分に洗浄する
- 生水を飲まない
- 猫の糞の処理を避けるか手袋を着用する
- ガーデニングなどの土いじり時は避けるか手袋を着用する
- フランスなどのトキソプラズマの多発地域(主にヨーロッパ)への旅行を避ける
検査方法は?
血液検査のトキソプラズマIgGおよびIgM抗体検査で診断します。
なお、IgM抗体は長期間持続するため、必ずしも数ヶ月以内の感染を意味するものではありません。
このため、トキソプラズマIgG抗体のアビディティ(抗原結合力)の測定により、感染時期を推定します。
※アビディティは時間と共に強くなっていくため時間の経過が分かるのです。
この、アビディティによる診断により、妊娠初期にIgMが陽性であった妊婦の約80%が先天性トキソプラズマ症のリスクが無い妊娠前の感染であることが分かり、不要な妊娠中絶や羊水診断、薬物療法をしなくて済むようになっています。
※上述したように、妊娠前の感染の場合は、胎内感染の起こる時期までには抗体ができるため、先天性トキソプラズマ症は発症しません。
治療方法は?
妊娠中の場合は、胎児への感染を防ぐために抗生物質のスピラマイシンで治療します。
公開日時:2016年04月17日 20時00分
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