「単純ヘルペスウイルス(HSV)」とは?出産時の産道感染に要注意
単純ヘルペスウイルスとは?
性器などの下半身に症状が現れる単純ヘルペスウイルスは性器ヘルペス(GH)とも呼ばれ、一般的には性交渉により感染する性感染症の1つです。
単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、性器ヘルペスのように、下半身に症状が現れるのは2型です。
ちなみに、口唇や顔などの上半身に症状が現れるものは1型になります。
また水疱瘡や帯状疱疹もヘルペスウイルスにより引き起こされますが、それぞれ型が違うため、症状が現れる場所や症状が異なっているのです。
ヘルペスウイルスの特徴
ヘルペスウイルスの特徴は、一度感染したら、治癒後も完全には体からいなくなるわけではなく、潜伏する事(潜伏感染)です。
つまり一度感染した場合、ウイルスを完全に退治することはできず、抵抗力が落ちてきた時等に潜伏中のウイルスが再び活動を始めるため、再発防止の対応が必要になります。
妊婦の性器ヘルペス感染のタイプ
感染のタイプとしては、初感染型、非初感染型、再発型の3種類があります。
なお、非初感染型は以前に感染したことがあるが、違うタイプのヘルペスウイルス(型が違う)に感染する場合となります。
特に注意が必要なのは、重篤な症状を引き起こす可能性がある産道感染による新生児ヘルペスの発症です。
感染ルートは?
経胎盤感染や分娩時の産道感染になります。
但し、子宮内感染はごく稀であり、通常は、出産時の産道感染により胎児に感染します。
初期症状は?
性器(外陰部など)にかゆみを伴う水ぶくれ(水疱)ができたり、水疱が破れて潰瘍になり、排尿が困難なほどの強い痛みが生じるのが特徴です。
また発熱や太もものリンパ節の腫れや痛みが見られることもあります。
なお、感染日から2~3日で検査は可能ですが、発症までは2~10日程度かかります。
感染から2~10日後に突然症状が現れるのが特徴です。
出産や胎児へのリスクは?
経胎盤感染の場合
妊娠初期の胎内感染(経胎盤感染)は流産になる場合もありますが、その頻度は低く、妊娠中の初感染でも健常児が多いです。
経胎盤感染した場合は、瘢痕や皮疹などの皮膚症状、小眼球症や網脈絡膜炎などの眼症状、小頭症や脳軟化症などの神経症状を発症するリスクがあります。
産道感染の場合
分娩時に母体に性器ヘルペスが存在する場合、産道感染による新生児ヘルペスを発症する可能性があります。
特に初感染の場合、約50%で新生児ヘルペスを発症します。
新生児ヘルペスは予後が悪いため、分娩時までに性器ヘルペスが完治していない場合や初感染の場合は、新生児ヘルペスを防ぐために経腟分娩ではなく、帝王切開が行われます。
なお、新生児ヘルペスの胎児死亡率は約30%です。
予防方法は?
性器ヘルペスを予防するためには、感染したパートナーとの性交渉を回避することや、破水予防、破水時の処置が重要になります。
特に分娩時期近くでの性器ヘルペスの感染予防が大切です。
検査方法は?
妊婦健康診査などの血液検査で抗体を調べる事で感染が分かります。
但し、抗体検査では確実には初感染か再発か、1型か2型かを区別することはできません。
治療方法は?
妊娠中にHSVの治療薬であるアシクロビル(ACV)の投与は、胎児への影響は極めて低いことがわかっており、経口もしくは静脈内投与が行われます。
妊娠末期に性器ヘルペスに感染した妊婦にアシクロビルを投与する事で、帝王切開率を軽減できるという報告がありますが、日本ではそういった方法は一般的ではありません。
経腟分娩と帝王切開の判断目安
新生児ヘルペスの感染を予防するために帝王切開を行う場合の判断の目安は以下となります。
- 初感染から1ヶ月以内に分娩となる場合
- 再発もしくは非初感染初発から1週間以内に分娩となる場合
公開日時:2016年05月15日 17時35分
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