「C型肝炎ウイルス(HCV)」とは?感染しても完治できる可能性が高い?

カテゴリ:妊娠の基礎知識
タグ:母子感染症

C型肝炎とは?

C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)が血液を介して感染し、成人の場合、平均で50日の潜伏期間を経て肝炎を発症します。
他の急性肝炎に比べて自覚症状は軽い反面、成人の初感染であっても慢性化しやすいという特徴があります。
慢性化すると自然治癒はほぼ不可能で、2ヶ月以上肝機能が正常機能に戻らない場合、インターフェロンによる治療が行われます。
なお、HCVはB型肝炎ウイルス(HBV)とは異なり、インターフェロン治療により体から完全に除去し、完治できる可能性が高い(40~70%)ウイルスです。
その反面、母子感染に対しては、B型肝炎とは異なり特異的な予防方法はありません。

B型肝炎ウイルスとの違いは?

両者の違いをざっくり言うと「B型肝炎は母子感染の予防方法は確立されているが、感染したら完治はしない」、「C型肝炎は母子感染の予防方法は確立されていないものの、感染しても完治できる可能性が高い」という違いがあります。
また、予防策を実施しない場合のB型肝炎ウイルスの母子感染率に比べて、C型肝炎ウイルスの母子感染の確率は低率です。

HCVの母子感染率

妊婦のHCV抗体検査の陽性率は0.3~0.8%で、この内、母子感染する確率は4~7%です。
母子感染の妊婦の殆どはHCV-RNAも陽性者です。

HCV抗体とは?

HCVの感染により作られる抗体です。
過去にHCVに感染したことがあり、現在は完治している場合にも陽性になります。
現在HCVに感染しているかどうかは、HCV-RNA定量検査でHCV-RNAの量を調べます。

HCV-RNAとは?

HCV-RNAはHCVの遺伝子(DNA)を意味し、HCV-RNA定量検査の結果が「検出あり」の場合は、現在HCVに感染していることを示します。

感染ルートは?

妊婦の感染ルート

主な感染ルートは以下となり、垂直感染と水平感染に分けられますが、胎内感染や性行為による感染は低率でほぼありません。
※垂直感染は親から子への感染(母子感染)、水平感染は個体から個体への感染を意味します。

垂直感染

  • 産道感染

水平感染

  • 輸血
  • 針刺し事故
  • 予防接種での注射器の使いまわし

母子感染のルート

母子感染は胎内感染や母乳感染はなく、殆どが分娩時の血液による産道感染です。
なお、分娩直前の母体側の肝機能悪化は、母子感染のリスクを高める事が分かっています。

初期症状は?

発熱や倦怠感などの感冒様症状の後、肝炎症状を起します。

出産や胎児へのリスクは?

C型肝炎ウイルスの感染自体が、出産や胎児に直接的な影響を与えるリスクはありませんが、感染予防のために選択的帝王切開を行う場合、妊婦の予後に注意する必要があります。

予防方法は?

HCVの母子感染(垂直感染)については予防方法は確立されていません。
「産婦人科診療ガイドライン」ではHCV抗体陽性妊婦の対応として以下を記しています。

  • HCV-RNA定量検査と肝機能検査を行い、HCV-RNA定量検査が陰性なら母子感染の心配はない
  • HCV-RNA定量検査が陽性の場合は、母子感染の可能性があるため内科受診を勧める
  • 授乳を制限する必要は無い旨を説明
  • HCV-RNA最高値群の妊婦には分娩方法についてインフォームドコンセントをとる

分娩時の感染予防

分娩に関しては、選択的帝王切開(破水前に計画的に帝王切開を行う事)により、経腟分娩や陣痛後の帝王切開に比べて母子感染率は低くなります。
しかし、選択的帝王切開については長期予後について不明であるため、選択的帝王切開の実施は予防方法として確立されておらず、インフォームドコンセントによる判断となります。

出生児の感染予防

出生3~4ヶ月に肝酵素とHCV-RNAを検査し、HCV-RNAが陽性の場合は、3歳までは治療を行わずに、定期的な再検査を実施します。
その理由として、HCV-RNA陽性児の内、約30%はHCV-RNAが自然消滅(陰性化)するためです。

検査方法は?

スクリーニング検査としてHCV抗体検査を実施し、陽性の場合は、HCV-RNA定量検査を行い、現在HCVに感染しているかどうかを判断します。

治療方法は?

3歳までにHCV-RNAが陰性化しなかった場合でも、インターフェロン治療で約半数(40~70%)はHCVの排除が可能です。

公開日時:2016年05月27日 14時08分

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