「先天性風疹症候群(CRS)」の感染ルートと初期症状および予防法

カテゴリ:妊娠の基礎知識
タグ:母子感染症

先天性風疹症候群(CRS)とは?

妊娠中に母親が風疹に感染し、胎内感染により胎児が風疹に感染すると、先天性風疹症候群(Congenital rubella syndrome)を発症する可能性があります。
先天性風疹症候群は、白内障や心奇形、難聴等を引き起こします。
一般的に妊娠初期の感染ほど、胎児の感染率が高く、発症率が高くなり、症状も重くなります。

感染ルートは?

おもに飛沫感染接触感染になります。
感染力のある期間は、風疹の症状が現れる前後の1周間程度です。
このためよく言われることですが、インフルエンザ予防と同様にマスク着用、手洗い、人混みを避ける事が予防方法になります。
なお、過去に風疹に罹患したことがある人は、抗体ができているため基本的に風疹に再感染することはありませんが、時間とともに抗体は減少するため、子どもの頃に罹患している場合、稀に大人になってから再感染する場合があります。

初期症状は?

風疹に感染すると、発疹、リンパ節腫脹、発熱が現れます。
なお、罹患していても症状を現さない人が約15%存在します。

出産や胎児へのリスクは?

胎児への感染リスクという点においては、妊婦が妊娠初期初めて風疹に感染した場合に、胎内感染する可能性があります。

罹患時期と発生頻度の関係

風疹の罹患時期と先天性風疹症候群の発生頻度は次のとおりです。
妊娠6週までは発生頻度は100%、逆に妊娠20週以降では0%となり、罹患の時期が14週間違うだけで結果は全く異なります。
特に妊娠4週から妊娠16週までの罹患は胎内感染する可能性が高いことが分かります。
なお排卵前に罹患した場合は胎児には感染しません。
罹患時期発生頻度
妊娠4~6週100%
妊娠7~12週80~83%
妊娠13~16週45~52%
妊娠17~20週6%
妊娠20週以降0%

先天性風疹症候群の主な症状

先天性風疹症候群になると、赤ちゃんには主に次の症状が現れます。
  • 白内障
  • 緑内障
  • 先天性心疾患(心奇形)
  • 難聴
なお、出生時に以上が認められなくても、10~20年後に糖尿病等の症状が現れる場合があります。

予防方法は?

風疹の感染の予防方法は、風疹ワクチン(生ワクチン)を接種する事です。
但し、妊娠初期にワクチンを接種しても風疹は予防できないため、妊娠の予定がある人や、妊娠16週未満の場合は接種できません。
※日本では「ワクチンの接種後2ヶ月間」は妊娠しないように指導されています。
また、風疹の抗体が陰性であったり、ワクチンを接種後数年が経過して抗体価が減少している場合は、風疹罹患患者との接触を極力避けるように心がける必要があります。
特にいわゆる『谷間の世代』(昭和54年4月2日~昭和62年10月1日に生まれた方)の人は、2013年の風疹の大流行の要因の1つともなっており、家族も含めてワクチンの接種が推奨されます。

関連記事:「風疹」の胎児への影響とMMRワクチン(MRワクチン)の副反応

なお、母体が風疹に感染した場合、胎児への感染を予防する方法はありません。

検査方法は?

「産婦人科診療ガイドライン」では、風疹罹患診断と対応のガイドラインとして次のように記されています。
  • 妊娠初期に風疹抗体価(HI)測定を行うこと
  • 妊娠初期の問診項目に「過去3ヶ月の風疹患者との接触、発疹、発熱、頸部リンパ節腫脹」「小児との接触が多い職場環境か」を加えること
  • 風疹様症状や風疹患者との接触があった場合や風疹HI抗体価256倍以上の場合は問診とともに風疹感染診断検査を行うこと
  • 風疹HI抗体価が16倍以下の妊婦には、産褥早期の風疹ワクチン接種を勧める
  • 風疹HI抗体価が低い妊婦には感染防止を促す

風疹感染診断検査とは?

ペア血清HI抗体価および風疹特異的IgM抗体価を測定することで診断します。

ペア血清HI抗体価

ペア血清とは、急性期 (発病後早期)と回復期 (発病後14~21日)のペア血清のHI(赤血球凝集抑制反応)抗体価を示します。
HIは型特異性が高く、早期に抗体が上昇し持続するという特徴があります。
このため、風疹のように赤血球凝集能を持つウイルスの凝集を抑制する抗体を調べる事で、感染時期を特定できます。
また2つの時期(急性期と回復期)のHI抗体価の倍率を調べる事で、より正確な感染時期を判断することができるのです。
「産婦人科診療ガイドライン」では、この風疹HI抗体価のペアの倍率が256倍以上の場合には、最近の感染の可能性が高いため問診や風疹感染診断検査を行うように促しています。
但し上述したように、HI抗体価は感染後速やかに上昇し長く持続するため、急性期ではなく、すでにHI抗体価がピークになった状態で採取した場合、感染時期を判断できません。
そのため、IgM抗体価も一緒に調べるのです。

風疹特異的IgM抗体価

IgM抗体は早期に産生され短期間で消失する抗体です。
風疹特異的IgM抗体価は風疹の発症から4日で全例陽性となり、2~3ヶ月で陰性化するため最近の感染を特定できます。
但し人によっては6ヶ月以上陽性反応が出たり、低レベルの陽性が3年以上続く場合もあり、一概に最近の感染とは断定できない場合もあります。
このため、ペア血清HI抗体価の両方で感染時期を判断するのです。

治療方法は?

風疹に罹患した場合の根本的な治療方法はなく、また、3日~5日間で自然治癒するため、通常は対処療法のみです。

公開日時:2016-05-01 18:54:20

このエントリーをはてなブックマークに追加

「母子感染症」に関する他の記事
「妊娠の基礎知識」に関する他の記事

...他の記事を見る

「基礎知識」の見出し一覧

このページのトップに戻る