「先天性水痘症候群(CVS)」とは?帯状疱疹ウイルスの飛沫感染に注意!

カテゴリ:妊娠の基礎知識
タグ:母子感染症

水痘とは?

水痘(varicella)は一般的には水疱瘡(みずぼうそう)と呼ばれ、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)により引き起こされます。
妊娠初期に妊婦が罹患すると、経胎盤感染によって先天性水痘症候群、分娩前後の感染の場合は新生児水痘を発症します。

胎児に感染する時期は?

母体からの抗体移行がない時期である、分娩前5日~分娩後2日の罹患の場合は新生児水痘の重症化(播種性水痘や出血性水痘)のリスクがあります。(重症化での死亡率は31%)
もし分娩直前に発症した場合は、分娩時期を発症後5日以降に遅らせる事で重症化を回避できます。(発症から5日以降の分娩では全例生存)
分娩前の21日以内に、母親が水痘に罹患すると、新生児は約24%の確率で発症します。
なお、妊娠20週以降の初感染および妊娠中の帯状疱疹の感染では胎児に感染しません。

感染ルートは?

母体

帯状疱疹ウイルスの感染経路は飛沫感染になります。

胎児

母体から胎盤を通じて感染(経胎盤感染)します。
但し、母体の帯状疱疹の罹患による胎児への影響はありません。

新生児

母乳感染はありませんが、乳房に病巣がある場合は感染する可能性があるため、直接授乳は避けるようにします。

初期症状は?

先天性水痘症候群(CVS)

概要

先天性水痘症候群典型的な特徴として、皮膚の瘢痕(はんこん)として知られる、特徴的な瘢痕性の皮膚病変があります。
また、発育不全や萎縮などによる四肢異常、脈絡膜炎などの眼の異常、小頭症などの中枢神経系異常が見られることがあります。
さらに、認知障害、発作、成長欠損が存在し、早期死亡が一般的です。

症状

先天性水痘症候の主な症状は以下となります。

  • 低出生体重児
  • 皮膚瘢痕
  • 脳萎縮
  • 四肢の発育不全
  • 小眼球症
  • 精神遅滞

新生児水痘

概要

新生児は、出生から5~10日後に水痘を発症します。
なお、新生児水痘は、妊娠初期の感染症で起こる先天性水痘症候群と混同してはいけません。
母親の水痘感染が出産直前に起きた場合、胎児は臍帯を通じて胎盤と交差する際にウイルスに曝されることがあり、保護母体抗体を受けるだけの期間、子宮内に留まらなかった場合、児は出生後の期間に重度または致死的な新生児水痘になる可能性があります。
もし、母親の水痘感染が出産の5日前から2日後に発症した場合、乳児の重度の水痘感染のリスクは極めて高くなり、未治療の場合の死亡率は31%と高い状況です。
死亡の原因は典型的には水痘性肺炎となります。

症状

新生児水痘の主な症状は以下となります。

  • 水痘性肺炎
  • 播種性水痘
  • 出血性水痘

出産や胎児へのリスクは?

胎児が感染した場合、先天性水痘症候群や新生児水痘を発症します。
先天性水痘症候群や重度の新生児水痘(分娩前5日~分娩後2日の罹患)の場合、死亡率が高いのが現状です。

予防方法は?

抗体陰性の母親ができる予防方法は、水痘の患者に近づかない事です。
母体が罹患している場合に、重度の新生児水痘の予防のためには、水痘帯状疱疹免疫グロブリンの予防投与を行い予防します。
※但し、その場合でも新生児に重度の水痘が発生する可能性があります。

検査方法は?

母体

血液採取による以下の抗体検査を実施します。

水痘帯状ヘルペスIgG抗体(EIA)

陽性の場合、過去に水痘ウイルス(VZV)に感染した事があり(不顕性感染も含む)、体内にウイルスが潜伏感染していることを意味します。
水痘の発症から3~5日後より検出可能で、水痘発症から2週間後がピークになり徐々に下降します。

水痘帯状ヘルペス抗体(CF)

CF抗体価は、水痘の発症から2週間後で約32倍、帯状疱疹の発症から1週間後で約64倍に増加します。
※抗体価は8の倍数で表されます。
※抗体価は、免疫の量を示し、発症の予防に十分な抗体価が無い場合はワクチン接種によって免疫を増強します。十分な抗体価を有する場合、ワクチン接種は不要です。

胎児

胎児の検査としては、四肢の異常や、他の視覚化できる異常がある場合、超音波検査での確認も可能です。

治療方法は?

一般的に、水痘帯状疱疹免疫グロブリンアシクロビルを投与します。

水痘帯状疱疹免疫グロブリン

水痘帯状疱疹免疫グロブリン(VZIG)は、ウイルスに暴露された免疫無防備状態の患者において、水痘を効果的に予防または軽減することが分かっています。
水痘に罹患された新生児に投与した場合、水痘帯状疱疹免疫グロブリンは感染速度にほとんど影響なく、効果的に感染を減弱させる事ができます。
このため、米国とカナダの諮問委員会は、出産の5日前から2日後に母親が水痘を発症した新生児に対して、水痘帯状疱疹免疫グロブリンの予防投与を推奨しています。

アシクロビル

また、母児が重度の疾患や水痘性肺炎を発症した場合は、抗ウイルス化学療法剤であるアシクロビルの投与(内服)行われます。
※但し、周産期における水痘帯状疱疹免疫グロブリンやアシクロビル投与の長期的な効果は十分に評価されていません。
とはいえ、胎児や新生児の生命を脅かす水痘・帯状疱疹ウイルの感染を緩和する事は、そのリクス以上の利点となる可能性があります。

水痘ワクチン

なお、水痘ワクチンは、生ウイルスを含んでおり、妊娠中の接種は禁忌となっています。
ワクチン接種が必要な女性は、接種から少なくとも1ヶ月間は妊娠しないように注意する必要があります。

公開日時:2017-07-24 12:54:06

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