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「弛緩出血」の原因と初期症状および治療法

カテゴリ:出産の基礎知識
タグ:産道異常

弛緩出血とは?

弛緩出血は分娩第3期(胎児娩出から胎盤娩出までの期間)または胎盤の娩出後、通常は子宮筋が収縮することで胎盤剥離面に開口している断裂血管が圧迫、絞扼(こうやく)され止血されますが、子宮筋の収縮不全によって止血されずに起こる異常出血を言います。
つまり、胎盤が剥がれた後、その剥離面から出血しますが、子宮収縮(子宮が元の大きさに戻ろうとする)により剥離面の傷口が自然に塞がり、結果的に止血されるのが通常ですが、何らかの理由で子宮収縮が遅いと傷口がなかなか塞がらずに大量出血(過多出血)になります。
なお、弛緩出血は分娩第3期以降の異常出血の中で最も頻度が高い異常出血の要因になっています。

原因は?

弛緩出血は主に次の原因により起こります。

子宮筋の過伸展

巨大児や多胎妊娠、羊水過多などにより妊娠中に子宮筋が過度に伸展されることで、胎盤娩出後に子宮筋の収縮不全が起こりやすくなります。

子宮筋の疲労

微弱陣痛に対して陣痛促進薬を投与した場合など、子宮筋が疲労した場合に子宮筋の収縮不全が起こる事があります。

子宮の器質的異常

子宮筋腫や子宮奇形のために子宮筋の収縮が抑制されることで起こる事があります。

子宮腟内の残留物

胎盤や卵膜、凝血塊がきちんと排出されずに残留している場合、二次的に子宮筋の収縮が生じる事で起こります。
子宮内に内容物があると、子宮が正常に収縮を始めないためです。

初期症状は?

胎盤娩出後に持続的もしくは間欠的な暗赤色の静脈性の子宮出血があります。
なお、検査により子宮収縮に異常がなければ、他の原因(母体損傷)の可能性があります。

出産や胎児へのリスクは?

胎児娩出後であるため、通常は胎児へのリスクはありません。
母体では大量出血(過多出血)により貧血やショック症状を呈する可能性があり、母体死亡に至る事もあります。

出産後の過多出血・分娩時異常出血

分娩後2時間以内に経腟分娩では出血が500mLを超えた場合、帝王切開では1000mLを超えた場合に過多出血もしくは分娩時異常出血と診断されます。
但し過多出血を予測するのは極めて困難であり、分娩後(分娩第3期後)から2時間は出血の状況を注視する必要があるとされています。
特に胎児の娩出から胎盤が娩出されるまでに時間がかかった場合は、出血が多くなる傾向があります。

分娩時異常出血の輸血の基準

一般的に経腟分娩では、500mLを超えれば輸液、1000mLを超える出血がある場合は輸血を行い、少なくとも1500mLを超えるまでには輸血を始めなければならないとされています。
なお、1500mLの出血で輸血を開始するのは遅すぎるという見方もあり、1000mLに近くなれば輸血の準備をし、1000mLを超えれば輸血を始めるべきという意見もあるようです。
しかし、実際には分娩時の異常出血で輸血を行う割合は、1000mLで1~4%、1500mLで13~15%程度です。
輸血の目安は「「ショックインデックス」のガイドラインと「産科DIC」のスコア表」もご参照ください。

予防方法は?

根本的な予防方法はありません。
但し、妊娠経過や分娩経過からある程度予測することは可能な場合があります。
そのリスク因子に対して予防策を講じたり、もしそれが難しいなら弛緩出血に対して予防処置を取れる準備をします。

検査方法は?

内診および超音波断層法を用いて子宮内の胎盤残留物や凝血塊の有無を確認します。

治療方法は?

主な治療方法には双手子宮圧迫法子宮収縮薬の投与があります。

双手子宮圧迫法

子宮後壁を腹壁から圧迫しつつ、片方の手を腟内に入れ、子宮前壁を把持して数分間圧迫し、止血します。
弛緩出血の初期に行う方法です。

子宮収縮薬の投与

子宮収縮薬として以下を投与します。

オキシトシン

オキシトシンを輸液や子宮筋層内局所投与法で投与します。

プロスタグランディンF2

プロスタグランディンF2の輸液を行います。
なお、下痢や頻脈などの副作用があるため注意が必要です。
また、喘息や緑内障の方には発作が起こる可能性があるため使用できません。

麦角アルカロイド製剤

麦角アルカロイド製剤を静脈注射もしくは筋肉注射で投与します。
なお、高血圧や冠動脈攣縮への注意が必要です。

公開日時:2016-11-30 10:54:26

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