「帝王切開術」の選択基準と実施方法および母体へのリスク

カテゴリ:出産の基礎知識
タグ:急速遂娩法

帝王切開術とは?

帝王切開は子宮壁を外科的に切開して胎児を娩出させる急速遂娩法の1つですが、技術の進歩により比較的容易で安全な手術であり、要約が緩和されてきているため近年増加傾向にあります。
反面、経腟分娩に比べればリスクは高く、麻酔や大量出血、手術による臓器損傷などが起きる可能性があります。
なお、帝王切開で分娩した場合は、子宮筋の切開創の十分な治癒のため、次の妊娠まで、1~3年空ける事が望ま良いとされています。

どのような場合に実施するか?

帝王切開には、選択的帝王切開(予定帝王切開)緊急帝王切開の2種類があり、それぞれの違いは以下のとおりです。
帝王切開の種類
種類説明
選択的帝王切開(予定帝王切開) 予め日時を決め、決めた日時に帝王切開を実施します。
緊急帝王切開 経腟分娩中に母児の状態が悪化したり、分娩停止した場合など、経腟分娩が継続できないと判断した場合に実施します。

実施条件

帝王切開は、原則として以下の2つの条件を満たしていない場合は実施してはいけません。
  • 母体が手術に耐えられる状態にあること
  • 胎児が生存していて、胎外生活が可能であること
※例外として、胎児や胎盤が母体の生命に危険を及ぼす場合(常位胎盤早期剥離など)は、母体救命のため、胎児の生死を問わずに実施します。

帝王切開術を選ぶ基準

主に以下の場合において選択的帝王切開もしくは緊急帝王切開による分娩が選択されます。
特に前置胎盤の場合は、ほぼ100%、選択的帝王切開になります。
帝王切開の適応
種類適応
選択的帝王切開(予定帝王切開) 母体適応:
前置胎盤、狭骨盤、児頭骨不均衡、多胎妊娠、前回帝王切開、子宮の手術の既往(子宮筋腫核出術など)、感染症(HIV、単純ヘルペスウイルスなど)、合併症(糖尿病、心疾患など)、高年初産婦
胎児適応:
胎位・胎勢異常(骨盤位(逆子)、反屈位、横位など)、巨大児、胎児発育不全
緊急帝王切開 母体適応:
子宮破裂の徴候がある、遷延分娩、分娩停止、妊娠高血圧症候群重症、常位胎盤早期剥離
胎児適応:
胎児機能不全、臍帯下垂・脱出、常位胎盤早期剥離、肩甲難産

実施方法

術式には腹式腟式の2種類がありますが、腟式を行うことは殆どなく、一般的には腹式で実施します。
また、子宮筋の切開方法として、子宮下部(子宮峡部)を切開する子宮下部横切開と子宮体部を切開する子宮体部縦切開(古典的帝王切開)がありますが、一般的には子宮下部横切開で実施します。
子宮下部横切開は子宮体部縦切開に比べて出血量や術後の癒着、縫合不全が少なく、また次回妊娠時の子宮破裂のリスクも低いのが特徴です。
但し、前置胎盤や多胎妊娠、子宮筋腫や子宮頸癌の合併妊娠、子宮下部の展退が不十分な場合など、子宮下部横切開が実施できない状況では、子宮体部縦切開を実施します。
※子宮体部縦切開のデメリットは子宮下部横切開のメリットの逆で出血量や術後の癒着、縫合不全が多く、次回妊娠時の子宮破裂のリスクも高い事です。

帝王切開術の全体の流れは以下となります。

  1. 腟内洗浄(感染予防のため)
  2. 麻酔(脊椎麻酔、硬膜外麻酔)
  3. 腹壁切開(約10cmの正中切開(縦切開)もしくは横切開)
  4. 膀胱子宮腔腹膜切開(腹膜と子宮壁が結合している部分を切開して子宮下部を露出させる)
  5. 子宮筋切開(子宮筋層を切開し卵膜を露出させる)
  6. 児娩出(コッヘル鉗子で卵膜を破膜し胎児を取り出す)
  7. 胎盤娩出(自然剥離による娩出を待つが出血が多いと用手剥離を実施)
  8. 子宮筋縫合
  9. 腹壁縫合

術後24時間の母親の状況

術後は、創部からの出血や滲出液の有無、バイタルサインを確認の上、術後合併症の予防措置がとられます。
合併症としては子宮復古不全、産褥熱、創傷感染、産褥血栓塞栓症があります。
また、定期的に子宮復古や創傷の治癒の状態などの産褥経過を確認し、診断します。
特に、術後合併症である深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)の予防として、早期離床や間欠的な下腿(ひざから足首までの部分)のマッサージが重要になります。
術後12時間経過後は、母児の健康状態に問題がなければ、上半身を約45度起こした体位(半座位)での授乳も可能になります。(但し、創部を保護するためフットボール抱きでの授乳)
翌日からは後陣痛の痛みに耐えながらの歩行練習が始まります。
また、児の母体外の生活に問題がなければ母子同室になります。
早期の母乳授乳などの母子接触を図るのは、母子愛着不形成の防止のためでもあります。

母体や胎児へのリスクは?

母体への影響としては、麻酔によるもの(脊椎麻酔ショックや誤嚥性肺炎)、術中操作によるもの(出血、臓器損傷(特に膀胱、尿管、腸管))、術後合併症によるもの(産褥熱、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症、術後腸閉塞、縫合不全)があります。
胎児への影響としては、産道を通過しない事によるもの(新生児一過性多呼吸)、麻酔によるもの(麻酔薬の移行、低血圧)があります。
また、1度帝王切開を実施すると、次回以降の分娩では選択的帝王切開となる場合が多く、また、子宮破裂、前置胎盤、癒着胎盤のリスクが高まります。

発生する確率は?

帝王切開の頻度は全分娩中約15%程度です。

公開日時:2017-05-07 10:04:32

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