「卵巣腫瘍」とは?悪性腫瘍の場合の卵巣の片側と両側切除の判断基準は?

カテゴリ:妊娠の基礎知識
タグ:合併症妊娠

卵巣腫瘍とは?

卵巣腫瘍は卵巣にできた腫瘍(嚢胞)になり、腫瘍と聞くと怖いですが、実際には約90%は良性です。
一般的には皮様嚢胞腫漿液性嚢胞腺腫(しょうえきせいのうほうせんしゅ)、粘液性嚢胞腺腫などの良性腫瘍が多いですが、稀に卵巣癌を発症する場合があります。
また、嚢胞性腫瘍の場合は、妊娠時16週頃までに自然消失する黄体嚢胞との鑑別も大切になります。
※卵巣腫瘍の場合は自然消失することはありません。

皮様嚢胞腫

成熟嚢胞性奇形腫とも呼ばれ、腫瘍内部に脂肪や毛髪、歯芽、軟骨などが含まれるものです。
通常は癌化することはありませんが、高齢者では稀に癌化する場合があります。

漿液性嚢胞腺腫

腫瘍の中身が漿液性で卵巣内部の表面を覆う上皮に腫瘍ができる上皮性腫瘍を言います。
※「漿液」は淡黄色の透明の液体を意味します。
具体的には、腫瘍の中に淡黄色の透明の液体が溜まり水風船のようになります。
通常は単房性ですが、稀に多房性の場合があります。

粘液性嚢胞腺腫

腫瘍内にネバネバとした液体が溜まり、多房性の場合が殆どです。

原因は?

卵巣腫瘍の原因は現時点で解明されていません。
※卵巣嚢胞の1つである、子宮内膜症性卵巣嚢胞(チョコレート嚢胞)は子宮内膜が原因で起こりますが、こちらもその根本原因は分かりません。

初期症状は?

一定の大きさになるまでは、膨満感がある程度で、無症状である場合が多いです。
茎捻転(卵巣嚢腫がねじれる事)が生じると、突然激しい下腹部痛が起こります。

出産や胎児へのリスクは?

妊娠中に子宮が増大することにより卵巣腫瘍の茎捻転が起きる可能性があります。
同様に産褥期における子宮復古時にも茎捻転のリスクがあります。

また、妊娠中に茎捻転が生じた場合緊急手術が必要になります。
卵巣腫瘍によっては、分娩時に産道通過障害が起きるリスクもあります。

予防方法は?

卵巣腫瘍の確立された予防方法はありません。

検査方法は?

内診および超音波検査、腫瘍マーカー等で診断します。
良性か悪性かはMRIやCTで検査して診断しますが、確定診断は実際の摘出物を見て行います。

治療方法は?

卵巣腫瘍の性状や大きさ(周囲との癒着の状態)により、卵巣腫瘍摘出術卵巣摘出術付属器摘出術など、治療商法が異なります。

卵巣腫瘍摘出術(嚢胞摘出術)

卵巣にできた嚢胞部分だけを摘出します。
これは腫瘍が初期の段階で癒着が発生していない場合の手術になります。
腹腔鏡による手術(腹腔鏡下手術)が増えてきていますが、腹腔内の癒着が予想される場合は開腹術になります。
摘出した嚢胞を調べ、良性か悪性かを診断します。
悪性であった場合、以下のような更なる手術が必要になる場合があります。

卵巣摘出術

卵巣全体を摘出します。
腫瘍が一定の大きさに達し癒着している場合や、悪性腫瘍の可能性が高い場合に行います。
なお、妊娠能力温存(妊孕性温存(にんようせいおんぞん))のために、片方の卵巣のみを摘出する場合もありますが、一般的ではありません。
悪性腫瘍の場合は、癌の転移の恐れがある場合は、一般的に付属器摘出術になる場合も多くあります。

付属器摘出術

卵巣だけではなく付属器である卵管も一緒に摘出する手術です。
悪性腫瘍の場合、癌が進行し、ある程度の癒着が認められ、癌の転移のリスクがある場合に行われます。
悪性腫瘍・境界悪性腫瘍の場合は、一般的には両側付属器摘出術が行われますが、妊孕性温存のために片側付属器摘出術を行う場合もあります。
※両側付属器摘出術か片側付属器摘出術かは手術中に判断します。

なお、残存腫瘍については、一般的には化学療法を実施して腫瘍を縮小した上で、改めて腫瘍縮小手術を実施します。

公開日時:2016年12月04日 13時04分

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