「子宮頸癌」とは?発生確率は約0.07%も発見の遅れは子宮全摘出も
子宮頸癌とは?
子宮頸癌は子宮頸部、特に子宮腟部に発生する悪性腫瘍で、約9割が扁平上皮癌であるため、早期発見であれば治すことができる癌であり、妊娠中でも微小浸潤癌までの進行度で抑えられれば、通常分娩(経腟分娩)も可能です。
しかし初期症状は殆ど無く、進行した状態で発見された場合、早産や帝王切開による分娩、妊娠週数によっては妊娠継続の断念、広汎性子宮全摘出術が必要になる場合があります。
なお、妊娠に起因して子宮頸癌が進行することはありません。
扁平上皮癌
扁平上皮は、消化管・子宮頸部などに見られる魚の鱗に似た薄く平らな(扁平な)形をした細胞によって構成される上皮です。
一般的に癌は各部位の扁平上皮細胞から発生します。
進行するとリンパ節を経由して体中に癌が転移する恐れがあり、他の癌と同様に早期発見、早期治療が最も大切になります。
子宮頸癌の分類
病変の広がり度合いによって分類されます。
0期(上皮内癌)および、Ⅰ~Ⅳ期(更に各期はaとbに分類)に分類されます。
進行期 | 要約 | 分娩 | |
---|---|---|---|
0期 | 上皮内癌 | 通常の分娩が可能 | |
Ⅰa期 | Ⅰa1 | 微小浸潤癌(間質浸潤の深さが3mm以内で,広がりが7mmを超えない) | |
Ⅰa2 | 微小浸潤癌(間質浸潤の深さが3mmを超えるが5mm 以内で,広がりが7mmを超えない) | 胎児の胎外生存が可能な場合は帝王切開術による分娩 | |
Ⅰb期 | Ⅰb1 | 子宮頸部に限局(病巣が4cm以内のもの) | 妊娠初期の場合は継続妊娠は困難 妊娠中期や妊娠後期の場合は胎児の胎外生存が可能な時期まで妊娠を継続させるかどうかを判断する |
Ⅰb2 | 子宮頸部に限局(病巣が4cmを超えるもの) | ||
Ⅱa期 | 腟壁下1/3に達していない(子宮傍組織の浸潤は認められない) | ||
Ⅱb期 | 子宮傍組織に浸潤 | ||
Ⅲa期 | 腟壁の1/3を侵している(子宮傍組織に浸潤しているが、骨盤壁にまでは達していない) | ||
Ⅲb期 | 骨盤壁まで浸潤 | ||
Ⅳa期 | 膀胱直腸の粘膜に浸潤 | ||
Ⅳb期 | 遠隔転移(小骨盤腔を超えて広がるもの) |
原因は?
特定の子宮頸癌を除き、ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus:HPV)による感染が原因であることが分かっています。
このウイルスは通常、性行為により感染します。
初期症状は?
初期症状は殆どありません。
癌が進行した場合、以下の症状が現れます。
- 生理と生理の間の出血
- 性交、腟洗浄、婦人科での内診の後の出血
- 生理が長い
- 生理が重い
- おりものが多い
- 骨盤の痛み
- 性交中に痛み
出産や胎児へのリスクは?
子宮頸癌が直接妊娠に影響を及ぼすことはありません。
胎児の生存可否は、癌の進行状況と妊娠週数(胎児の胎外生存の可能性有無)により変わってきます。
母体側では経腟分娩や帝王切開術による分娩後に、広汎性子宮全摘出術を行った場合、今後は子どもを産めなくなります。
胎外生存率
胎児の胎外生存率は妊娠週数に比例して高まります。
妊娠22週以降は早産に分類され、胎外でも生存はできる可能性がありますが、少しでも長く子宮に留まる事でより生存率を高め、後遺症の程度を軽減する事ができます。
在胎日数と生存率の関係については、妊娠22週の分娩での生存率は30~40%、この内、後遺症なく育つ割合は約10%です。
妊娠30週では胎外生存率は90%に高まります。
広汎性子宮全摘出術
Ⅰb期以上進行している場合(但しII期以降や高齢の場合は除く)に、子宮と腟の一部を骨盤壁近くから広い範囲で切除する手術です。
他臓器への転移防止の観点から子宮頸癌に関連する所属リンパ節も一緒に切除します。
女性にとっては、子宮全摘出という、今後子供が作れなくなる体になる事への精神的なショックが大きく、また家族計画も変更を余儀なくされる事になります。
発生する確率は?
子宮頸癌健診を受けた1万人の内、120人が一次検診で「異常あり」となり、精密検査(二次検診)を受けた93人の内、7人に子宮頸癌が見つかったという報告があります。
そのため、このデータから発生確率は約、0.07%になります。
※但し、一次検診で「異常あり」となった人が全員二次検診を受けたわけではないため、確率はもう少し高くなる可能性があります。
なお、妊娠中に子宮頸癌が合併することは稀です。
予防方法は?
子宮頸癌ワクチンの摂取により予防することができます。
子宮頸癌ワクチン
子宮頸癌ワクチンはヒトパピローマウイルスの感染を予防するワクチンです。
但し、子宮頸癌ワクチンには稀ですが複合性局所疼痛症候群(CRPS)などの重い副作用(副反応)が現れる事があります。
ワクチンを接種した約338万人の内、0.08%に接種部位の腫れなどを含めた副反応の疑いが出たという厚生労働省の報告があります。
このため、厚生労働省は2013年から子宮頸癌ワクチンの接種勧奨中止(差し控え)を行っています。
これは、将来の子宮頸癌のリスクと副反応のリスクのどちらを優先するかは、数字だけでは決められない、難しい繊細な問題である事を物語っています。
検査方法は?
妊娠初診時に細胞診による子宮頸癌のスクリーニング検査を実施しています。
細胞診
細胞診は、子宮頸部をへらやブラシで擦って子宮頸部の細胞を取り、それをスライドガラスに塗り付けて顕微鏡で細胞を観察し、癌細胞が無いかを確認する診断方法です。
治療方法は?
必要に応じて子宮頸部円錐切除術を行い、臨床進行期を確定します。
0期およびⅠa1期
妊娠中に定期検査を実施し、Ⅰa2期以上への進展がなければ通常の分娩を行います。
なお、産後にも定期的な癌検診が必須です。
Ⅰa2期
母体の治療優先のため、胎児の胎外生存が可能な場合は帝王切開術により分娩します。
胎児の胎外生存が不可能な場合は胎児を子宮に置いたまま、非妊時と同様の治療を行います。
妊娠中期や妊娠後期の場合
妊娠中期や妊娠後期など、妊娠週数によっては胎外生存が可能な週数まで妊娠を継続させ、胎児娩出後に治療を開始する場合があります。
その場合、分娩後に広汎性子宮全摘出術や骨盤リンパ節郭清術などの根治手術を実施します。
但し多くの場合は早産(低出生体重児)となり、何らかの後遺症が残る可能性があります。
Ⅰb期以上
妊娠初期の場合は妊娠継続は困難であるため、広汎性子宮全摘出術を行います。
公開日時:2016年11月27日 11時52分
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