「黄疸」とは?新生児の赤血球寿命が短いために起きる生理的事象?

カテゴリ:病気の基礎知識
タグ:新生児の病気

黄疸とは?

黄疸は全身の皮膚組織や眼球結膜がビリルビンによって黄染した状態であり、一般的には肝機能障害によって引き起こされる症状です。
但し、新生児の場合の黄疸は、胎内環境から胎外環境への適応過程における一時的な生理現象としても起こり、黄疸の発生する期間やビリルビンの値によって病的な黄疸か生理的黄疸かが分別されます。
病的黄疸の場合、ビリルビン毒性によって核黄疸を来す可能性があり黄疸は重要な症状です。

ビリルビンとは?

ビリルビンは血液に含まれている黄色い色素であり、血中のビリルビンの濃度から肝機能障害や胆管障害が分かります。
ビリルビンは赤血球の中のヘモグロビンから作られますが、赤血球の寿命(約120日)が過ぎると壊れ、ヘムとグロビンに別れ、それが酵素の働きによりヘムビリルビン(間接型ビリルビン)に変化します。
この間接型ビリルビンは、通常、肝臓の酵素により再度分解され直接型ビリルビンとなり、便や尿と一緒に排泄されますが、肝機能に障害があると十分に分解されずに血中のビリルビン濃度が高まります。
血中のビリルビン濃度が高くなると、皮膚や眼球結膜が黄色みを帯び、黄疸を発症します。

黄疸の種類

黄疸は生理的黄疸病的黄疸に分別されます。

生理的黄疸

新生児にみられる内眼的黄疸です。
生後2~3日で発現し生後4~5日でピークに達し、生後1週間を過ぎると自然消退します。

病的黄疸

上述した生理的黄疸の範囲を超えた黄疸を病的黄疸もしくは新生児高ビリルビン血症と呼びます。
病的黄疸は以下の3つに大別されます。

早発黄疸

生後24時間以内に出現する黄疸です。
新生児溶血性疾患か否かが重要になります。

重症黄疸

血清総ビリルビン値が正常域を超えて高くなる黄疸です。
頭血腫や帽状腱膜下血腫などの閉鎖性出血感染症消化管通過障害早産母親の糖尿病が主な原因になります。

遷延性黄疸

生後2週間以上に渡り持続する黄疸です。
母乳性黄疸新生児肝炎胆道閉鎖症甲状腺機能低下ビルベール症候群が主な原因になります。

原因は?

新生児は生理的に多血であり、赤血球寿命は70~90日と短く(成人は約120日)、赤血球崩壊によるビリルビン産量が多くなります。
また、グルクロン酸転移酵素活性が低いため、肝臓でのビリルビン処理能力が劣ります。
このため、結果として腸からのビリルビン再吸収量が多くなり、血液中のビリルビン濃度が上昇し、生理的黄疸が引き起こされます。

初期症状は?

新生児の全身の皮膚組織や眼球結膜に黄染症状が現れます。
また新生児の便の色が白っぽくなったり、おしっこの色が赤っぽくなります。

新生児へのリスクは?

病的黄疸の場合、以下の疾患が考えられます。

新生児溶血性疾患

血液型不適合妊娠疾患

通常、母体血と胎児血は胎盤内で混ざらないようになっていますが、実際には少量ですが胎児血が母体血に流入する事(母児間輸血)があります。
その際、母体側が胎児血と抗原抗体反応を起した場合、母体で胎児の赤血球に対する抗体が作られ、胎児(新生児)の赤血球が母体の抗体により壊され、溶血性疾患が引き起こされます。
特に、Rh(D)式の血液型不適合は重症になるケースが多いです。

関連記事:「Rh(D)式血液型不適合妊娠」の原因とリスクおよび治療法

その他の溶血性疾患

クームス試験が陰性であり、ヘモグロビン値が正常あるいは低値で、且つ網赤血球数が上昇している場合、赤血球膜蛋白異常赤血球酵素異常が考えられます。
赤血球膜蛋白異常には赤血球形態が特異的な遺伝性球状赤血球症や遺伝性楕円状赤血球症などがあります。
赤血球酵素異常には赤血球形態が非特異的なグルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症やピルビン酸キナーゼ欠乏症などがあります。

また、クームス試験が陰性であり、ヘモグロビン値と網赤血球数が正常値の場合は、閉鎖性出血(頭血腫、帽状腱膜下血腫、頭蓋内出血など)、排便の遅れや減少、腸肝循環亢進(腸閉塞など)、カロリー摂取が不十分である事が考えられます。
※クームス試験は母体血液中の不規則抗体の有無を調べる試験です。

核黄疸(ビリルビン脳症)

核黄疸は重症黄疸新生児にみられた血清(間接型)ビリルビン値の上昇による大脳基底核の黄染を示します。
核黄疸は特有な中枢神経症状後遺症を残します。
核黄疸の発病からの日数と症状は以下となります。

  • 第1期(発病約2~3日)
    • 嗜眠
    • 筋緊張低下
    • 吸啜反射減弱
  • 第2期(発病約3日~1週)
    • 発熱
    • 筋緊張亢進
    • 後弓反張
  • 第3期(発病約1週以降)
    • 筋緊張亢進消失

遷延性黄疸

遷延性黄疸は、黄疸が生後2週間以上継続する場合の呼称になりますが、光線療法などの治療を実施しつつ、原因究明を進め、母乳性黄疸かや治療可能な黄疸であるかの早期の見極めが重要です。
例えば新生児肝炎や胆道閉鎖症などの直接型高ビリルビン血症の場合、鮮やかな黄色ではなく黄褐色になり、灰白色便(白っぽいうんち)や褐色の強いビリルビン尿を伴います。

母乳性黄疸

発症時期によって以下の2つに分けられます。

母乳栄養児の高ビリルビン血症

生後1週間までに発症した場合です。
排便や授乳頻度(摂取したカロリー量が十分ではない)などが因子になります。

遷延性高ビリルビン血症(母乳性黄疸)

後1週~2ヶ月に渡って発症した場合です。
母乳中のグルクロン酸転移酵素活性阻害物質の存在や腸肝循環亢進が因子と考えられます。

予防方法は?

根本的な予防方法はありません。
なお、母乳栄養児の高ビリルビン血症に関しては、十分なカロリーを摂取させる事で重症化を予防できる可能性があります。

検査方法は?

ビリルビンの濃度測定には次の検査方法があります。

経皮的ビリルビン濃度測定

黄疸計のプローブの先端を新生児の前額部胸骨部に押し当て、皮下組織に存在するビリルビンを測定し、血清総ビリルビン相当値に換算する測定機器を使用した測定方法です。

血清総ビリルビン値測定

分光光度計を使用した分光光度法や、ジアゾ試薬を用いてビリルビンを直接型と間接型に分画するジアゾ法(マロイ・エベリン法)があります。

遊離ビリルビン値測定

ビリルビンは血液中ではアルブミンに結合して存在しますが、一部結合していないビリルビンがありこれを遊離ビリルビンと呼びます。
核黄疸(ビリルビン脳症)の鑑別には血清総ビリルビンだけではなく、遊離ビリルビンの測定が必要になる場合があります。

治療方法は?

治療方法には、光線療法交換輸血があります。
光線療法は、新生児を日光に晒すと皮膚の黄疸が消退するため、日光の代わりに光線を当てて黄疸を治療する方法です。
交換輸血は重症黄疸の新生児の血液自体を交換する方法で、もっとも確実な治療方法ですが、一方でウイルス感染や移植片対宿主反応のリスクがあります。

公開日時:2016年09月19日 19時43分

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