「流産」(切迫流産、進行流産、不全流産、完全流産、稽留流産)とは
自然流産は妊婦の約15%で発生し、多くの妊婦が12週未満で発生します。
また、高齢になるほど流産の発生率は上昇し、40歳では発生率は25%にまで高まります。
発生時期の分類
発生時期による分類では、妊娠12週未満を早期流産、妊娠12週以降、22週未満を後期流産と呼びます。
早期流産
早期流産は自然流産の大部分を占めます。
原因は染色体異常などの胎児自身の異常によるものが殆どです。
後期流産
後期流産は絨毛膜羊膜炎や子宮頸管無力症など母体側の異常が原因となる割合が高くなります。
流産全体では約10~15%を占めます。
臨床分類
自然流産は、以下の5つの臨床分類に分けられます。
切迫流産
切迫流産は少量の出血や下腹部痛を伴う流産への移行状態であり、正常妊娠への復帰が可能な場合もあります。
症状としては、妊娠早期における腟からの出血や下腹部もしくは骨盤や腰の痛みは切迫流産の兆候の可能性があります。
全妊婦のおよそ4分の1は、最初の3ヶ月間(妊娠12週まで)に数度の腟出血がありますが、その内の約半数は実際に流産が進行しています。
通常、切迫流産に伴う激しい痛みや、腟からの激しい出血はめったにありません。
腟の超音波検査では、胎芽(胎児)が生存しており、子宮収縮に伴う下腹部や性器出血が見られるかで切迫流産かどうかを判断します。
この段階では子宮頸管は閉じられており、子宮頸部に活発な運動や組織は見られませんが、子宮収縮による子宮圧痛、もしくは子宮の付属物による圧痛が生じる可能性があります。
なお、切迫流産は、性器出血や下腹痛はあるものの、胎芽(胎児)と付属物は子宮内にあり、子宮頸管が開大していない状態と定義されています。
これらの結果から、切迫流産と以下の流産の段階とを区別します。
進行流産
進行流産は流産が開始し、子宮頸管が開大している状態です。
子宮頸管の膨張に伴い腟からの激しい出血が生じます。
性器出血は通常、切迫流産より激しく、しばしば激しい腹痛や引きつるような感覚を伴います。
進行流産は出血量が増大し、子宮口が開大し、胎芽(胎児)や付属物が子宮口を通過している状況と定義しています。
不全流産
不完全流産は流産の際に胎芽あるいは胎児とその付属物が完全に排出されずに一部が残存している状態です。
激しい腹痛を伴う腟出血が起こる可能性があります。
子宮頸管は通過後の子宮内容物により開大している場合もあれば、閉じられている場合もあります。
超音波検査で子宮内に一部の子宮内容物が存在するかどうかで不完全流産かを判断します。
完全流産
完全流産は胎芽あるいは胎児とその付属物が完全に排出された状態です。
患者は、激しい出血および腹痛と子宮内容物の通過の過程を経験し、流産が終了する頃には、通常、これらの出血と痛みは収まります。
超音波検査で子宮内が空になっているかどうかで完全流産を判断します。
なお、超音波検査無しでこの診断をする際は、流産が完全であるかどうかを判断するのが難しい場合があり、注意が必要です。
稽留流産
稽留流産は妊娠22週未満に胎芽あるいは胎児が子宮内で死亡後、発症がなく子宮内に停留している状態です。
流産の原因
流産の主な原因は以下のとおりです。
- 胎児側因子
- 妊卵の異常(染色体異常)
- 胎児付属物の異常
- 多胎妊娠
- 母体側因子
- 子宮異常(子宮頸管無力症、奇形、筋腫)
- 卵巣機能異常(黄体機能不全、高プロラクチン血症)
- 内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能異常)
- 感染症
- 自己免疫疾患(抗リン脂質抗体症候群)
- その他の母体合併症
- 染色体異常
- 外傷
- 放射線被曝
- 薬剤
- 精神的因子
- 食物
- 夫婦間因子
- 免疫異常(免疫応答の異常)
- 血液型不適合
- 男性因子
- 染色体異常
- 精子の異常
- 原因不明
活動カウント
妊婦が日常どの程度の活動しているかを客観的に把握する方法として、活動カウントを利用します。
これは各活動強度に応じてカウント数を定め、高いカウント数の活動はできるだけゆっくり、時間をかけて行うように心がけることで、切迫流産を予防します。
活動カウント法のポイントは活動内容をできるだけ具体的に定義しておく事です。
活動内容 | 活動カウント数 |
---|---|
雑巾がけ | 1169.3 |
階段昇降 | 1075.4 |
シャワー浴 | 1001.5 |
布団干し | 797.9 |
掃除 | 772.9 |
入浴 | 719.1 |
アイロンかけ | 699.2 |
洗濯干し・取り込み | 689.1 |
洗濯 | 647.0 |
散歩 | 588.8 |
公開日時:2010年04月18日 00時38分
おすすめの書籍!
胎児の成長や母体の変化については1日ごとの胎児の成長が詳解されている定番書「はじめての妊娠・出産安心マタニティブック」がお勧めです。この本はアメリカで大ベストセラーとなった「The Pregnancy Journal」の日本版になります。
なお、赤ちゃんの成長状況はどうしても不安になってしまいますが、お母さんにできることは必要な栄養素をしっかりと摂り、赤ちゃんの成長を助けることです。こちらの記事ではその栄養素を摂取する理由とおすすめのサプリメントを紹介していますので、是非ご参照ください。