「会陰裂傷」とは?会陰切開しなかった初妊婦の発生率は約57%にも!

カテゴリ:出産の基礎知識
タグ:産道異常

会陰裂傷とは?

会陰裂傷は分娩時の会陰組織の裂傷を言い、胎児が産道を通過する際に、最も生じやすい軟産道の損傷です。
なお、多くの場合において、腟壁裂傷を伴います。

会陰裂傷の分類

会陰裂傷は裂傷の程度によって、次の4つに分類されます。

第1度会陰裂傷 会陰皮膚および腟粘膜のみに限局される裂傷
第2度会陰裂傷 会陰の筋層の裂傷を伴う
第3度会陰裂傷 肛門括約筋や腟直腸中隔の一部裂傷を伴う
第4度会陰裂傷 肛門粘膜および直腸粘膜にまで裂傷が及ぶ

原因は?

第3度~第4度会陰裂傷のリスク要因として以下が挙げられます。

  • 初産婦
  • 陣痛促進剤の投与
  • 分娩台2期の遷延
  • 硬膜外麻酔
  • 巨大児
  • 回旋異常(後方後頭位)
  • 正中会陰切開
  • 吸引・鉗子分娩(急速遂娩術)

硬膜外麻酔とは?

硬膜外麻酔は神経や内分泌系反応を抑制できる麻酔法の1つです。
脊椎麻酔とは異なり、硬膜という皮一枚分を残して(硬膜を破らず)、硬膜外腔に打つ麻酔です。
脊椎から遠いため髄膜炎を起こしにくいというメリットがありますが、反面、麻酔が効きにくいというデメリットもあります。
また、副反応(頭痛、血圧低下、徐脈、吐き気・嘔吐、呼吸抑制など)、合併症(血腫、膿瘍、神経損傷など)のリスクがあります。

正中会陰切開法とは?

正中とは真ん中を意味し、正中切開法は会陰を縦方向に切開する切開方法です。
少し斜めに切開する方法として正中側会陰切開や側会陰切開があります。
正中会陰切開のメリットとしては、切開の大きさに対する会陰の開大効果が優れており、また血管・神経分布が少なく出血や痛みが少ない事、左右対称なため縫合し易いなどがあります。
反面、縦に切開するために、会陰裂傷時に真下方向に裂傷が起こり、第3度~第4度会陰裂傷が起きるリスクがあります。

出産や胎児へのリスクは?

第1度会陰裂傷は多くの場合、縫合は必要ありません。
第2度会陰裂傷以上では縫合を必要としますが、裂傷部位の状況によっては血腫内に貯留した血液を外に誘導し減圧するためにドレーンと呼ばれる管が挿入されます。
第3度~第4度会陰裂傷では、肛門括約筋が損傷されるため、排泄機能に影響する場合があります。
また、裂傷の程度が大きくなるほど感染症のリスクが高くなります。

胎児娩出後の治療となるため、会陰裂傷自体が胎児に影響する事はありません。
※但し、第3度~第4度会陰裂傷が起きる場合、上述したリスク要因が存在する可能性が高いため、胎児がそれらの影響を受ける可能性はあります。

発生する確率は?

会陰切開を行わない場合、初妊婦の会陰裂傷の発生率は約57%程度です。なお、その内の約56%は第1度会陰裂傷です。
そのため、必ずしも会陰切開が必須というわけではありません。
最近では会陰切開を行わない病院も増えてきているようです。

予防方法は?

会陰切開により過剰な会陰裂傷を抑止する事はできますが、リスク要因に挙げたような要因があれば、完全に防止できるとは限りません。

検査方法は?

会陰裂傷では胎児の娩出直後から出血が確認できます。
肉眼で損傷部位を確認し、手で腟壁を開き、裂傷の部位と深さ、出血の状況を確認します。

第3度会陰裂傷以上の場合

肛門に指を挿入して括約筋の断裂と直腸粘膜の損傷程度を確認します。

治療方法は?

胎盤娩出まではガーゼで圧迫止血を行い、胎盤娩出後に裂傷部を縫合します。
なお、その際、血腫を予防するために裂傷の断端から5mm程度上から縫合します。
また、縫合は腟壁縫合(腟壁、つまり処女膜縁より上の部分)と皮膚縫合(会陰部分)の2つに分けて縫合します。

第1度会陰裂傷の場合

腟壁側の創部断端奥から吸収糸で縫合を始め、処女膜縁まで腟粘膜を縫合し、続いて肛門側から皮膚を縫合します。
なお、腟壁縫合は結節縫合、皮膚縫合は垂直マットレス縫合を行います。

第2度会陰裂傷の場合

第1度会陰裂傷と同様に、腟壁側の創部断端奥から吸収糸で縫合を始め、処女膜縁まで腟粘膜を縫合しますが、皮下組織の創傷が深い場合はまず皮下縫合を行い、その後、垂直マットレス縫合を行います。

第3度会陰裂傷の場合

処女膜縁まで腟粘膜を縫合し、続いて肛門括約筋の縫合を行います。

第4度会陰裂傷の場合

処女膜縁まで腟粘膜を縫合し、続いて直腸粘膜の縫合を行います。
縫合後、直腸診において直腸粘膜の状態や肛門括約筋の収縮状態を確認します。
また、感染症の予防のため、抗生物質の全身投与を行い、下剤の投与で便秘の予防も行います。

助産師による縫合

出血量が多くなく、第2度会陰裂傷までであれば、医師ではなく助産師が縫合を行う場合があります。
その場合は、必ず産婦に同意を得てから行います。

公開日時:2016-12-31 15:45:12

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