「染色体異常症(トリソミー)」(ダウン症候群を含む)とは?

カテゴリ:妊娠の基礎知識
タグ:胎児異常

トリソミーとは?

トリソミー(Trisomy)は三染色体性を意味し、本来は2本で対をなしている染色体が3本になるのがトリソミーです。

通常のヒトの染色体は23対、46本から構成される常染色体と性染色体があり、1番目から22番目までの22対44本の常染色体と、23番目の1対2本(XYかXX)の性染色体を持ちます。
トリソミーはこの常染色体の一部が2本ではなく、3本で構成される事象となり、主な常染色体のトリソミーは以下の3つとなります。

  • 21トリソミー(ダウン症候群)
  • 18トリソミー(エドワーズ症候群)
  • 13トリソミー(パトー症候群)

一般的に染色体番号が若いほど症状が重くなります。
13番染色体、18番染色体、21番染色体以外の番でもトリソミーは起こり得ますが、それらにはより重要な遺伝情報が多く致死的となり、殆どが早期流産するため、生まれてくる事は稀です。
※例えば8トリソミー(モザイク症候群)があります。別名:Warkany症候群。出生は25,000~50,000人に1人と推定されています。

トリソミーの原因

染色体の不分離転座が原因です。
不分離は、精子、卵子の形成時の減数分裂時において染色体が正常に分配されない事で、完全な染色体セットをもたない配偶子が作られる事で発生します。
また、転座は染色体が他の染色体に付着する事で起こりますが、その半分は遺伝によるものと考えられており、パパとママのどちらかが均衡転座保因者である場合があります。
なお、全体の95%を不分離が占め、更に不分離の発生頻度は母親の出産年齢が高くなるほど高くなり、この比率は、高齢出産とされる35歳頃を境に一気に高まります。
染色体異常には根本的な治療法はありません。

減数分裂について

染色体は2本で1対となる二倍体細胞の構造をしていますが、これを相同染色体と呼び、一方を父方から、もう一方を母方から受け継ぎます。
まず、細胞はDNAの複製を行い倍増し、同じ配列を持つ2本の染色体(相同染色体)を形成します。
更に相同染色体同士が接近し、二価染色体を形成します。
そして、その後、二価染色体を構成する相同染色体が分離し、4本の染色体の集まり(娘細胞)となりますがこれを減数分裂と呼びます。
この二価染色体時に、相同染色体同士で一部の配列を取り替える「乗換え」という動きが起こりますが、この際、異なった組み合わせの染色体を持つ配偶子が形成されます。
この「乗換え」は、正常な染色体分離のためには必須なのですが、その際、染色体の不分離が起こると染色体異常となります。

トリソミーが分かるタイミング

妊娠15~18週頃に実施する、羊水染色体検査で確定的診断ができます。
なお、検査結果がでるまでに2~3週間を要するため、確定した時点で妊娠20週を超えています。
しかし、妊娠中絶が行えるのは妊娠21週までであり、22週以降は出来ません。
そのため、万が一、トリソミーが確認された場合、時間的に(精神的にも)ギリギリの選択が迫られます。

21トリソミー(ダウン症候群)

概要

21トリソミーは染色体の21番目が1本多い事に起因した障害です。
染色体に起因した症候群の中では最も出生頻度が高く、約1,000人に1人と言われています。
但し、21トリソミーでも、胎児の80%は流産や死産となります。
ダウン症候群の呼び名は、1965年にWHOによってダウン症候群に関する論文を記したジョン・ラングドン・ハイドン・ダウンから取り、正式名称として決定されました。

主な症状

※すべてが必ずしも合併するわけではありません。

  • 知的障害
  • 奇形
    • 特異的顔貌(吊り上った小さい目)
    • 舌が長い
    • 手の猿線
    • 耳介低位
    • 翼状頸
  • 先天性心疾患
    • 心室中隔欠損症
    • 心内膜床欠損症
    • 単心室
    • 総肺静脈還流異常症
  • 低身長
  • 肥満
  • 筋力が弱い
  • 頸椎の不安定性
  • 眼科的問題
    • 先天性白内障
    • 眼振
    • 斜視
    • 屈折異常
    • 難聴

ダウン症候群の特徴とその発生確率を表にすると、以下のとおりです。

特徴 発生確率
精神発達遅滞 100%
成長阻害 100%
変則的な指紋 90%
腹筋の分離 80%
柔らかい靭帯 80%
低血圧 80%
短頭 75%
小さな性器 75%
瞼の皺 75%
短い四肢 70%
楕円形の口蓋 69%
低く丸い耳 60%
小さな歯 60%
低い鼻 60%
弯曲した指 52%
臍ヘルニア 51%
短い頸部 50%
短い手 50%
先天性心疾患 45%
手の猿線 45%
大きな舌 43%
蒙古襞 42%
斜視 40%

18トリソミー(エドワーズ症候群)

概要

18トリソミーは染色体の18番目が1本多い事に起因した障害です。
出生頻度は4,000~8,000人に1人であり、男女比が1:3と女性が多いです。
これは男性は殆どが流産してしまうためです。
エドワーズ症候群の呼び名は発見者のエドワーズより取られました。
生後1年以内の死亡率は90%です。

主な症状

※すべてが必ずしも合併するわけではありません。

  • 重度の知的障害
  • 奇形
    • 口唇裂
    • 口蓋裂
    • 握ったままの手
    • 耳介低位付着
  • 内臓の奇形
    • 鎖肛
    • 先天性心疾患
    • 先天性食道閉鎖症
    • 白血病
    • 円錐角膜
    • 斜視
    • 甲状腺機能亢進症
    • 甲状腺機能低下症
  • 先天性心疾患
    • 心室中隔欠損症
    • 心内膜床欠損症
    • 単心室
    • 総肺静脈還流異常症

13トリソミー(パトー症候群)

概要

13トリソミーは染色体の13番目が1本多い事に起因した障害です。
出生頻度は5,000人に1人です。
男児は殆どが流産してしまうため、女児が多いです。
パトー症候群の呼び名は発見者のパトーより取られました。
生後1年以内の死亡率は90%です。

主な症状

※すべてが必ずしも合併するわけではありません。

  • 重度の知的障害
  • 奇形
    • 口唇裂
    • 口蓋裂
    • 無眼球
    • 小眼球
  • 先天性心疾患

公開日時:2012-02-17 23:33:10

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